小久保2軍監督からかけられた厳しい言葉 海野隆司の心に火がついた“5番手捕手”

ソフトバンク・海野隆司【写真:福谷佑介】
ソフトバンク・海野隆司【写真:福谷佑介】

7日のオリックス戦で2打席連続で3ラン「死に物狂いで結果を」

 ベンチが驚きに包まれた。しかも、一度ならず、二度までも、だ。7日に杉本商事バファローズスタジアムで行われたウエスタン・リーグのオリックス戦。ソフトバンクの「8番・捕手」でスタメン出場した海野隆司捕手が2打席連続で3ランをぶち込んだ。

 まず2回だ。連続四球で出塁した野村大樹内野手、増田珠内野手を塁に置き、2死一、二塁で打席へ。オリックス先発・コットンの3球目を捉えると、打球は左翼フェンスを超える2号3ランになった。さらに4回には増田が四球、笹川吉康外野手が右前安打で繋ぎ、1死一、三塁で再び左翼スタンドへと打ち込んだ。

「いや、たまたまですね。とりあえず狙っていたわけじゃないんで」。海野自身も苦笑いで振り返った2打席連続の3ラン。小久保裕紀2軍監督も「普段打たんヤツが打つと、こんなにゲームがラクになるんやと思いながら見ていました。びっくりしました。みんなびっくりしていました」と、驚きを隠せなかった。

「本当に死に物狂いで結果を残していくっていうことを今考えています」と、決意に満ちた表情でこう語った海野。実は数日前、小久保2軍監督から厳しい言葉をかけられていた。

 指揮官はこう明かす。

「自分の置かれてる位置が何番目なんかっていうのを、それを伝えるのも僕らの仕事だと思うんで。『現時点では5番手』っていう話をしたんで、チームの中でね。(甲斐)拓也がいて、嶺井(博希)がいて、谷川原(健太)がいて、(渡邉)陸がいての5番手。2番手じゃないよ、と。キツい話もしましたけど、でもそこから上がってくるには本人しかないので」

 2019年のドラフト2位で東海大から入団した海野は昨季、甲斐に続く2番手捕手として自身最多の47試合に出場。DeNAから嶺井が加入した今季も開幕1軍入りしたものの、5月3日に出場選手登録を抹消され、その後はファーム暮らしとなっている。

 1軍では嶺井が2番手捕手となり、外野手や代走と起用の幅のある谷川原が3番手に位置している。一方の海野は2軍でも打率.208。持ち味である守備でも精彩を欠いており、指揮官は「危機感が感じられないかな、と思って」と、あえて厳しい言葉を投げかけた。

 海野にとってはショッキングな言葉だった。「もちろん結果が出ないと、そういうふうに言われる世界ですし、それを本当に受け止めながら。でも、内心はめちゃめちゃ悔しいし、情けない。いざ言葉で言われるとやっぱり違います」。小久保2軍監督自らの苦言に気が引き締まった。

「もう本当にやらないとクビになる世界でもあるし、どんどん下が入ってきて、新しい戦力も入ってくる。その中で自分の良さっていうのを出していかないと残れない世界。反骨心というか、本当にやってやるみたいな気持ちになっています」

 現状、1軍の捕手陣に割って入ることは難しい。実績と経験のある甲斐、嶺井が君臨し、その牙城はなかなか揺るぎそうにない。かといって、2軍でくすぶっている暇は、海野にはない。

「とにかくもう周りのことは考えず、自分のできることをやっていきます。やっぱり結果を残さないといけないんで、とにかく自分が結果を出すっていうことだけを思ってやっています。自分は別にホームランを打つ打者じゃない。欲をかくと、また同じことの繰り返しになる」

 2打席連続の3ランはあくまで、たまたま出た結果。自分のやるべきことは揺るがない、揺るがせない。小久保2軍監督からの厳しい言葉も糧に、いつ1軍に呼ばれてもいいように、日々を過ごしていく覚悟だ。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)