打率.185に苦しむ周東佑京の「伸び悩んでいるところ」 長谷川勇也コーチが語る“ジレンマ”

ソフトバンク・周東佑京(手前)を指導する長谷川勇也1軍打撃コーチ【写真:竹村岳】
ソフトバンク・周東佑京(手前)を指導する長谷川勇也1軍打撃コーチ【写真:竹村岳】

「近藤だってね…」 周東佑京が近藤健介の背中を追ってほしい理由とは

 自分の課題と向き合っているところだ。ソフトバンクの周東佑京内野手はここまで59試合に出場して打率.185。「自分の思い描いているようなことができていない」と、自分の打撃像を求めて日々を過ごしている。プロ入り時から課題とされてきた打撃面。長谷川勇也打撃コーチの目には、どのように映っているのか。

 試合前の打撃回りでも会話をすることが多い2人。打撃面で取り組んでいることについて長谷川コーチは「彼も彼なりに、やりたいことがある。自分で(考えて)練習もやっているので、そこは尊重している」という。周東自身の考えをリスペクトした上で「それをやりたいなら、こういう感覚の方がいいんじゃない? みたいなアプローチをしています」と、本人が進みたい方向に進めるよう、ともに試行錯誤をしているようだ。

 周東のことではないが、長谷川コーチはある選手の姿勢を「突き詰められていない」と真っ直ぐな言葉で表現したことがある。周東は1軍に出始めた2019年に25盗塁を記録したが、その頃から打撃面が課題であることは周囲も、そして誰よりも本人がわかっていた。今季も打率1割台に沈む。長年苦しみ続けている“弱点”に対して、周東の姿勢は、長谷川コーチにはどう見えているのか。

「打てれば(試合に出られる)っていうのは本人も感じている。自分なりにも取り組んでいて、自分で勉強もしに行って学んできたりということもしている。その気持ちはあるし、方法を考えて、勉強してきたところから良くなろうとしている。でも実際に結びついていないというところは、もうちょっとできるとは思いますけど」

 スポーツである以上、結果が存在する。結果として打てるかどうかは本人の力だが、長谷川コーチは周東の姿勢については慎重に言葉を選び、バッサリと言い切るようなことはなかった。そして「なんと言うのかな……」。周東自身がまだ、どういう打者になるべきか理解できていないという。絞り出すように、こう続けた。

「自分の感覚がまだ定まっていない選手なんです。そういう選手って、何が良くて何が悪いのか、自分自身でもわかりきっていない。それをわかる意味でも、時間を費やして数を振って、自分のダメなところを理解できるようになれば、今やっている新しい取り組みをそこに結びつけることができる。自分自身、まだ把握しきれていないところが、伸び悩んでいるところかなと思います」

「まずはやっぱり、試合に出続けようと思ったら安定感がないと無理ですね。天性のアーチストや長距離砲であれば、安定感は度外視できますけど、スピードのある選手なので、まずは安定感。打率で言えば.250。4回立てば1回は安定感のある仕事ができるみたいな。(打率も).250を打てれば、四球も絡んで.270もいける。数字的な見栄えもある程度はクリアできるから。好きなようにするのは、相当時間はかかると思います」

 俊足が最大の持ち味だが、それは塁に出るからこそ発揮されるもの。何度も「安定感」という言葉を使って、長谷川コーチなりに周東が目指すべき打撃像を表現した。まだまだ打撃面における良さと、弱点を把握できていないという周東。長谷川コーチは「近藤だってね……」と切り出す。通算1090安打のヒットマンも、12年目になってようやく理想だけを追求できている。

「ずっと捕手も内野も、外野にも回されて、打順もいろんなところを打って、自分の足場を固めるためにホームランは度外視して、出塁率や打率ってところを我慢してずっとやっていた。ようやく立場、地位を確立して、安定感を出せる選手になったからこそ、去年くらいから長打が欲しいっていう自分の願望を叶えられるような方向にシフトチェンジができたので。やっとですよね、近藤くらいになって、やっとですよ」

 日本ハム時代から長谷川コーチを「師匠」と尊敬する近藤を引き合いに、選手として踏むべきステップを例えていた。自分が思い描くスタイルを追求するのは、数年はレギュラーとして活躍してからでいい。活躍してから出ないといけない。「そうじゃない選手は自分の足場を固めるためにも安定感を持っていないと、出たり出なかったりの選手で終わってしまう」。全ては周東のためを思った言葉だった。

(竹村岳 / Gaku Takemura)