確かな手応えを得た1打席があった。日本野球機構(NPB)は22日、「日本生命セ・パ交流戦」の表彰選手を発表し、ソフトバンクの近藤健介外野手が優秀選手賞に選出された。「嬉しく思いましたし、交流戦から調子がどんどん上がってきていたので、それもあわせてよかったかなと思います」と喜ぶ。打線の中心になり、優勝したDeNAと同じ11勝7敗で戦い抜いたチームを力強く引っ張った。
近藤自身、交流戦を打率.413で終えた。12球団で唯一の4割台を記録し、チームの2位躍進の原動力となった。取り組み自体は「特に、そこまでは変えていない」というが「練習がゲームにつながるようになってきている。打ち損じが少なくなっている分、結果がついてきている」と状態を自己分析している。
一時は2割前半にまで落ち込んだ打率も、.285まで回復。10本塁打はチームトップと、交流戦で復調曲線を描いてみせた。本人が確かなキッカケとして挙げたのは、交流戦2戦目となった5月31日の中日戦(PayPayドーム)。得たものは、今季のここまでの戦いでは感じられなかった感覚だった。
相手先発は涌井で、結果的には7回1失点に抑えられ、チームも敗戦した試合。近藤が挙げたのは初回1死二塁のチャンスで迎えた打席だ。カウント2-2からの7球目、外角のチェンジアップを左翼線に鋭いファウルを放ち、続く8球目の真ん中に入ってきたスライダーをライナーで左前に弾き返した。「なかなか今シーズンなかった感覚のレフト前だったので、その打席が印象に残っています」という。
「(打ったのは)スライダーでしたけど、真っ直ぐを待ちながら。しっかりとタイミングも合っていましたし、遅れて向こうに飛んだ感じではなかったので。ただ向こう(レフト方向に)にいったというよりは、ボールとしっかり距離も取れていました。掴んだとまではいかないですけど、印象に残っている1打席です」
近藤にとってのニュアンスは、その打席を境にして復調したというよりは「結果的に、ですね。感覚的によかったので、今考えればそこだったかなと思います」というもの。「バッティングは1試合で変わるもの」と語るように、たった1打席で何かをつかめるほど簡単なものではないが、探し続けていたことのキッカケを見つけたことは確かだ。残りの交流戦でも結果を出し続け、得た感覚をハッキリと輪郭にしてきた。
近藤も、開幕以降の不振の要因には「打ち損じ」が多かったと分析している。「それが結果球になるのか、ファウルや空振りも打ち損じですし。自分が打てると思ってバットを振っているので。それがヒットになっていない、前に飛んでいないっていうのは問題でした」と受け止める。「打つべき球を打っていないと追い込まれる」。言葉にすると単純かもしれないが、打つべき球を打つことができていなかった。
通算打率.306のヒットマン。練習におけるバロメーターを問われると「試合では結果が出ればいいですけど、練習の中ではしっかり思っているコースに飛ばすようには心がけています。それができる時、できない時が当然練習の中でもあるので。そこは確認しながらという感じでやっています」という。自身のバットコントロールが思うようにいくかどうかが、試合の結果にもつながっているようだ。
優秀選手賞に選出された賞金の100万円の使い道には「考え中です。何か、ためになることをしたいと思います」と笑った。23日からリーグ戦が再開する。手に入れた感覚を、まずは首位のオリックス相手に表現していく。