8本塁打中5本が左投手から…対左打率.190でも栗原陵矢が長打を打てる“シンプル思考”

ヤクルト戦で2ランを放ったソフトバンク・栗原陵矢【写真:小林靖】
ヤクルト戦で2ランを放ったソフトバンク・栗原陵矢【写真:小林靖】

侍ジャパンの高橋奎から8号2ラン…長谷川コーチが見る長打が増える理由は

■ソフトバンク 3ー2 ヤクルト(14日・神宮)

 数字には表れない独特な傾向が、大きな一発につながった。ソフトバンクは14日のヤクルト戦(神宮)で3-2で勝利した。2回1死一塁で栗原陵矢外野手が8号2ランを放ち、結果的にこれが決勝点となった。「しっかりと集中して自分のスイングができたと思います」と球団を通じてコメント。対左打率.190と苦しんでいただけに、サウスポーからのアーチには、シンプルな意識が隠されていた。

 相手先発は3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)にも選出された高橋奎。2回、先頭打者の牧原大成内野手が中安打で出塁する。正木智也外野手は空振り三振となり、栗原を迎えた。1ストライクからの2球目、カーブにグッとこらえて振り切った打球は右翼席に飛び込んでいった。直球に強さのある投手で「真っ直ぐ(狙い)でいって、反応でいきました」と感触を振り返った。

 試合前の時点で栗原は右投手に対して136打数に立って打率.265。一方、左投手には79打数に立って打率.190だった。しかし、今季の8本塁打のうち右投手から3本、左投手から5本だ。打数が倍近く違うにも関わらず、左投手からの長打が目立つ。本人は「いや、それはたまたまです」と話したが、栗原の場合は独特な傾向が投手の左右によって表れている。

 長谷川勇也打撃コーチからの視点はどうだろうか。「左投手は逆に、やることがシンプルになるから」という。数字には表れないような意識が、栗原の長打につながっているようだ。

「肩口っていうか、体から近いところからくるボールに対して、しっかりと強いスイングができているのはあるんじゃないかな。右よりは“左左”の方がシンプル。球種も減らせるし、そのままスッと入っていけるんじゃないかなと思います」

 サウスポーは左打者にとっては背中からくるような投球軌道。自然とバットが内側から出ることになり、力強いスイングにもつながっているという。投手によってはフォークやチェンジアップといった抜け球を左打者に対して投じない場合もある。栗原も投手の左右によって「変えている部分はあります。一緒のようには打てないので。(大事な部分は)タイミングと目付けじゃないですか」と解説する。

 投手が9番に入ることもあり、栗原はこの日も7番だった。「この成績では当然だと思いますし、自分次第だと思います」と、チームの勝敗にも責任を背負う。得点圏打率.254で「なかなか得点圏で打てていないですし、僕が打っていれば勝っている試合は何試合もあった」と、成績を正面から受け止めている。決勝弾となったこの一発を復調のきっかけにしたいところだ。

 長谷川コーチも「ああやって甘めの球をしっかりと仕留めていくことと、外角の誘い球に振らされなければ、左にも上がっていく」と描いてほしい曲線を語る。栗原自身も「変わらず、あまり意識せずに。“H”のランプは嬉しいので」と自然体を強調した。必死に見つけようとしているヒントは、左投手にあるかもしれない。

(竹村岳 / Gaku Takemura)