自分以外の遊撃手は「晃しかいない」 今宮健太が離脱中に感じた後輩の頼もしさと成長

ソフトバンク・今宮健太【写真:荒川祐史】
ソフトバンク・今宮健太【写真:荒川祐史】

5月27日に特例2023で登録抹消「発熱とかもあって時間がかかった」

 緊急事態を救ってくれた後輩が頼もしかった。体調不良のため戦列を離れていたソフトバンクの今宮健太内野手が6日のDeNA戦(PayPayドーム)で復帰した。出場選手登録され、早速「2番・遊撃」で先発出場。4回無死で相手先発の今永から先制のソロアーチを放つと、サヨナラの起点になる安打を放ち、いきなり2安打。離脱している間、どんな思いでチームの戦いを見守っていたのだろうか。

 今宮が登録抹消中、チームは4勝4敗だった。「皆さんが感じているように、波に乗れていない」。今宮なりに現状を分析していた中で、1軍へと戻ってきた。相手エースからの先制弾には「今永投手は真っ直ぐが速く、強さがあるので、その真っ直ぐに負けないようにと打席に入りました。アリ(有原)がホークス初登板で踏ん張っている中で、先制点を取ることができて良かったです」とコメントした。

 5月27日に「特例2023」で登録抹消となった。症状を「発熱とかもあって時間がかかってしまった」と振り返る。4日に宇部で行われた2軍のDeNA戦で実戦復帰したばかりだが、今宮不在の間、遊撃を守っていた川瀬晃内野手が「内側広筋筋挫傷」で離脱となったこともあり、この日1軍復帰となった。「体調が戻れば大丈夫だとは思っていた。ファームのゲームにも出られたので」。1軍に来たからには、チームのために全力を尽くすだけだった。

 自身の不在の穴を埋めた川瀬は、昨オフも自主トレをともにした後輩。今宮が実戦復帰したその日、マツダスタジアムで行われた広島戦でセーフティバントを仕掛けた際に、一塁手と交錯して足を負傷した。8年目のシーズンで、必死にポジションを掴もうとする姿を今宮はどう見ていたのか。

「晃のスタイルっていうのは、あのガッツ溢れるプレーでチームを鼓舞する。あいつのやり方で頑張っていたので。そういう姿っていうのは色々感じる部分もあった。(頑張りが)無駄にならないようにしたい」

 見ている側にも気持ちが伝わってくるほど、気迫が溢れるプレーが川瀬の持ち味だ。ファンに限らず、先輩である今宮にもそれは伝わっていた。引き金となったセーフティバントにも「全力でプレーしている結果での怪我なので。僕もそういう怪我もありましたし。それがなくなったら良さがなくなるっていうのはあるので。そこは仕方ないと言ったらあれなんですけど」と慮る。川瀬の姿を見て感じた思いは、自分が力に変えていかないといけない。

 今宮は昨季打率.296を記録するなど、2位に終わったチームの中でも存在感を見せた。自分の立場をより確立していくためにも、今季はより重要なシーズン。自分以外の選手が遊撃を守る姿に抱いた感情は意外にも、もどかしさよりも、川瀬への頼もしさだった。

「僕がいなくなった瞬間、こうなった時には『晃しかいない』と思った。僕もそんな余裕があるわけでもないですし、晃もそこまで結果が出ているわけではなかったですけど、目に見えないところ、いろんなところでチームに貢献しているところはあったので。ああいうことにはなりましたけど、いい形で進んでいけるように自分ができることを精一杯したいと思います」

 復帰していきなりの本塁打は先輩としての“貫禄”にもなったはず。「あれだけ(晃みたいに)僕がガツガツしたら、怪我しちゃうので。でも全力でやっていくことには変わりないですし。なんとかいい形でチームが波に乗っていけるようなってところですね。しっかりとそのピースになれるように頑張りたいと思います」。ホークスの内野に流れる“TEAM KENTA”の思いが、必ずチームを救う。

(竹村岳 / Gaku Takemura)