劇的サヨナラ打に加えて超ファインプレーに「アーリーワークのおかげ」
劇的な幕切れだった。6日にPayPayドームで行われたDeNA戦。1-1の同点で迎えた9回2死一、二塁のチャンスで、打席に立ったのはソフトバンクの牧原大成内野手だった。2ボール2ストライクからの6球目。伊勢が投じた真ん中低めの真っ直ぐを弾き返すと、打球は中前に落ちた。
「最後は本当にチャンスだったんで、ランナーも佑京でしたし、なんとか転がせばどうにかなるのかなっていう気持ちで打席に入りました」。打球が中堅の前に落ちると、二塁走者の周東佑京内野手が一気に生還。牧原大は二塁ベースを回ったところで、駆け寄ってきたチームメートにもみくちゃにされた。
意外にもこれが自身初となるサヨナラ打。「すごい嬉しかったです」とサヨナラの瞬間を噛み締める。真っ先に駆け寄ってきたのは、直前に浅い中飛に倒れていた柳田悠岐外野手だった。「ナイスバッティング!」。キャプテンからの労いの一言も胸に響いた。
この日は守備でもチームを救った。4回1死でソトの打球は力のない二ゴロに。猛然と前進してキャッチすると、飛び込みながらランニングスローでアウトにした。同級生で移籍後初先発だった有原航平投手を救うビッグプレーに「アーリーワークのおかげです」と胸を張った。
この牧原大が発した「アーリーワークのおかげ」という言葉には重みがある。ナイトゲーム時の球場入りはチームでもトップクラスに早い。試合開始の7、8時間前の午前10時過ぎから11時までにドームに到着し、まだ照明が灯る前のグラウンドで1人、黙々とウオーミングアップを始める。体を温めると、その後、スタッフにノックを打ってもらって守備練習に励む。
その後、若手に課されるアーリーワークのバッティング練習に加わることも。積極的なプレースタイルの裏には、準備にしっかりと時間をかける姿がある。先の広島戦ではチームの緊急事態にともない、急きょ遊撃も守った。「普段から準備はしているんで。悔いがないように練習だけはしっかりやって、それでミスをしてもあまり悔いはない」。こうした準備が牧原大のプレーを支えている。
太もも裏の肉離れで1か月離れた戦列に戻ってきた。「チームに迷惑をかけましたし、すごい悔しい思いはありました。なんとか取り返そうという気持ちで必死になってやっています」。日々、じっくりと時間をかける。大事な場面で輝くために、欠かしてはいけないことなのだ。
(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)