柳田悠岐が見せる“男気”と気遣い…西田広報が明かすお立ち台を後輩に2度も譲った舞台裏

ソフトバンク・柳田悠岐【写真:荒川祐史】
ソフトバンク・柳田悠岐【写真:荒川祐史】

東浜巨「『お前行ってこい』と言われてギータさんの男気に惚れました」

 キャプテンの気遣いが光った。5月6日のロッテ戦(ZOZOマリン)でヒーローインタビューに選ばれたのは、勝ち投手となった東浜巨投手だった。8回3失点、117球の熱投だったが、1点ビハインドの8回に柳田悠岐外野手が逆転2ランを放ち、付いた白星。東浜が明かしたのは「本当はここにギータさんが立つはずだったんですけど『お前行ってこい』と言われて。ギータさんの男気というか、優しさにまた惚れました」という舞台裏だった。

 柳田がヒーローインタビューを譲ったのは初めてではない。5月だけでも、もう1回あった。同23日の日本ハム戦(エスコンフィールド)で先発の大関友久投手が5回2失点。2-2の6回に勝ち越しのソロを放つなど、柳田の3打点の活躍で、大関に勝ちがついた。キャプテンがヒーローインタビューでもおかしくない展開だったが、その場に現れたのは大関だった。

 西田哲朗広報は「絶対に柳田さんは『大関、出したってくれ』って言うとわかっていました」と明かす。大関は同9日の日本ハム戦(熊本)で9回を投げて完封勝利。同16日に盛岡で行われた楽天戦では8回3失点で完投するも、4敗目を喫した。なかなか打線が援護できていないことも、大関の頑張りも柳田は感じていたから、大関にスポットライトが当たって欲しかった。西田広報もその心中を察しており、試合後に柳田に掛け合った時にどんな返事が来るのかも、ある程度は予想していたようだ。

 柳田は9回の守備で交代するまで、グラウンドに立っていた。西田広報も試合中では、柳田の意向を確認することはできない。ヒーローインタビューの人選をどうするか……。考えたのは「大関に前もってアプローチをしたんです」。6回から降板した大関には、こう伝えた。

「大関も柳田さんがヒーローだと思っていたはずなので。『柳田さんは絶対に大関を上げたってって言うから』と大関に伝えて。『柳田さんがそう言ったら、インタビューは大関でいくからね』って。選手の感情としては、それを言わなかったら『え? 柳田さんは?』ってなるんです。そうしておけば、大関も納得してくれるじゃないですか」

「そういう柳田さんなりの気遣いとかをわかってくれたら、大関がインタビューでしゃべりやすいのか、しゃべりにくいのかも変わってくる。チームとしても柳田さんが(大関の頑張りを)代弁してくれて『これだけ頑張ってくれている』『認められている』っていうのを分からせるためにも、大関には事前に言ったんですよね。だから先にアプローチをかけました。実際に柳田さんは同じことを言いましたから」

 広報の仕事はチームの露出を増やすこと。柳田のコメントを聞きたいというファンもいるはずだ。だから西田広報は柳田に「公式(SNS用の)の写真撮影と、囲み取材だけお願いしてもいいですか?」と頭を下げた。ビジターゲームでは基本的に広報から囲み取材をセッティングすることはないが「そこは“釣り交換”です。全然OKと応じてくれました」という。西田広報なりの経験値と優しさで、選手の露出をコントロールしているつもりだ。

 西田広報も現役時代を過ごしたから、選手の気持ちは理解できる。「選手は『全部やって』っていうと嫌がるんです。大関を行かせてあげて、という柳田さんの言い分もすごくわかったので。柳田さんらしいなと思いました」。今季がキャプテン2年目。存在感はもちろん、どこまでも大きな器だから、柳田の背中に後輩はついていく。

(竹村岳 / Gaku Takemura)