“師匠”和田毅が語る大竹耕太郎 阪神で無双する左腕がホークスでくすぶっていた理由

ソフトバンク・和田毅【写真:藤浦一都】
ソフトバンク・和田毅【写真:藤浦一都】

今季すでに6勝に「すごすぎでしょう。想像以上の結果を出している」

 現役ドラフトからチャンスをつかんだ。結果を残し続けている後輩を頼もしげに見ているのが、ソフトバンクの和田毅投手だ。今季、阪神へ移籍した大竹耕太郎投手がここまで7試合に登板して6勝0敗、防御率0.41の大活躍。2日の広島戦では左手に打球が直撃し、無念の途中降板となった和田も「すごいなと思っています。すごすぎでしょう。結果を残すとは思っていましたけど、想像以上の結果を出している。持っているものはすごいと改めて思いました」と見守っている。

 大竹から和田にお願いして、2022年1月から自主トレをともにするようになった。同じ早大出身の左腕は、昨オフに初めての試みとなった現役ドラフトで阪神に指名されて移籍。先輩の和田は「同じチームなので残念なのもありますけど」とした上で「『この選手がほしい』と求められて行くわけですし、上でしっかり投げて結果を出して、勝っていくことがプロで入った1番の目的だと思う」と背中を押していた。

 ソフトバンク時代は通算35試合に登板して10勝9敗。2021年から2年連続で未勝利と1軍で結果を残せずにいた。ウエスタン・リーグでは2021年に90回2/3を投げて8勝。2022年も78回1/3を投げるなど、体は元気だった。起用を決めるのは首脳陣ではあるが、ファームでくすぶっていた大竹の姿を、和田はどう見ていたのか。

「そういう状況を作ったのは本人ですから。勝負の世界、プロの世界なので。ホークスの中では、彼が1軍で投げられる状況を作れなかったというだけ。それは監督、コーチとは関係のない域だと僕は思っています。しっかりと能力を発揮すれば、1軍でも通用する投球はホークスでもしていた。それを彼が掴み切れなかった現実はありますけど、それを阪神ではものにしている」

「ファームで投げている間は常に1点も取られずに、ずっと7回無失点を続けたらいつか使ってくれる。点を取られたりすると『上だったらどうだろう……』と想像されてしまうので、文句のない結果を出し続けるしかない。『これで使ってもらえなかったら仕方ない』『俺はもうやることをやった』と。1点も取られていないしっていう状況を本人が作らないといけない。上に『使いたい』と思わせるしかないので」

 自力で首脳陣に「使いたい」と思わせる域まで達せなかったのでは……和田が言うから説得力がある。2月で42歳を迎えた。2日の広島戦では左手に打球が直撃して2回途中で降板となったが、すでに今季4勝。「僕が首脳陣でも、同じような成績なら若い方を使いますよ。未来がある方がいいので。使いたいと思わせるだけの結果を残すしかないんです」。リーグ最年長選手となった今も、自分の実力でローテーションを守っているから言葉に力がある。

 和田は海外FA権を行使して、2012年からメジャーリーグに挑戦した。左肘の故障もあり、マイナーからメジャー昇格を目指す日々でも“使わせる”という思考は同じだった。「メジャーに上がりたいと思っても、結果が出なかったら上げてくれない。若い選手もたくさんいますし、メジャーは特に若い選手を使いたくなりますしね」。自分の居場所は自分で切り開くしかない。日米での経験が和田にそう思わせる。

 大竹の人柄を「自分の信念、芯を持っている子」と表現する。「それがいい方向にいけばプラスになるし、間違った方向にいっちゃうとマイナスになる。でもそれを確立するのも、変えていくのも自分ですから。周りが『ああしろ』と言ったところで」。ある意味で柔軟に使い分けなければいけない自分の“芯”。阪神での結果を踏まえて「それだけ大竹が成長した証だと思います」と活躍を喜んでいた。

「阪神に移籍して自分を使ってもらえる状況、チャンスをつかんだから、今の場所で投げている。環境が変わったのもありますけど、自分でチャンスをものにしただけ。移籍して本人が一生懸命に頑張ったというか、その成果だと思います」。和田自身が、自分にも言い聞かせる言葉だった。プロ野球である以上、チャンスをつかむのはいつだって自分自身だ。

(竹村岳 / Gaku Takemura)