買い物中に鳴った突然の電話 高谷裕亮コーチの激動の1日…1軍バッテリーコーチの役割

ソフトバンク・高谷裕亮コーチ【写真:藤浦一都】
ソフトバンク・高谷裕亮コーチ【写真:藤浦一都】

的山哲也バッテリーコーチが体調不良…“高谷さん”が再び1軍のベンチへ

 激動の1日が終わった。ソフトバンクの高谷裕亮2軍バッテリーコーチが30日、体調不良の的山哲也バッテリーコーチに代わって1軍戦のベンチに入った。チームは中日に13-5で大勝。高谷コーチは試合後「勝ったので、まずはそれがよかったです。(コーチとして初の1軍ベンチは)ちょっと緊張しましたけどね」と笑顔で振り返った。

 なかなか落ち着かない試合展開だった。打線が2回を終えて5得点するも、4回に先発の大関友久投手が木下に2ランを浴びて3点差とされた。その裏に再び3点を奪って点差を広げたが、大関は直後の5回にも1失点。最終的には今季最多の13点を奪うも、8回に登板した板東湧梧投手、9回の古川侑利投手もそれぞれ失点。試合展開を見なければならないバッテリーコーチにとっても、安心はできなかっただろう。

 28日のロッテ戦(同)では長谷川勇也打撃コーチが体調不良となり、村上隆行2軍打撃コーチが急遽、遠征先の姫路(兵庫)から駆けつけた。高谷コーチは29日、買い物に出かけていた途中に電話が鳴ったという。「ちょうど昼ごろくらいに」。相手は小久保裕紀2軍監督で「『1軍の雰囲気だったり、試合の空気を肌で感じてこい』という話はいただきました」と声をかけられた。

 いきなりの1軍行きの知らせを「『あ、そういう状況なんだ』って。最初は何が起きているのかわからなかったけど、色々聞いたらそうなんやって思った」と受け入れて、夕方にはファーム施設「HAWKS ベースボールパーク筑後」にまで荷物を取りに行った。「言われたのが今日(30日)だったらドタバタでしたけど。必要最低限のものだけを取りにいきましたよ」と明かした。

 夜には対戦相手となる中日の打者の映像をチェックした。基本的に2軍とやることは同じ。30日にドームに来てからは、自分が見て感じた印象と、甲斐拓也捕手らとの意見をすり合わせた。「あとはスコアラーの人ともミーティングがあるので、そこで話をしていってという感じです」という流れで試合へ。全体練習前のアーリーワークにも参加し、1軍の流れにも溶け込めていた。

 1軍の試合におけるバッテリーコーチの役割を高谷コーチは「投手の状態がどうだとか、打者の反応がどうだとか、試合を進めていくことでの話です。あまり細かくは(言えないけど)」と説明する。この日の落ち着かない試合展開に当てはめると「なかなか3者凡退がなかった。こういう試合はあるんですけど、なるべく1点でも少なくっていうところですよね」と、ポイントを挙げた。

 交流戦開幕となったこの日は中日3連戦の初戦。2戦目、3戦目への影響を考えると、1点でも少なく抑えるのがバッテリーの目的だ。結果的に大関の3者凡退は2イニングで、リリーフ2人も失点した。「明日も明後日もあるので、締められるところは締めないと。あまり意識しすぎると難しいんですけど、野球は点取り合戦。明日以降にどう生かしていくか、じゃないですか」と、3連戦であることをしっかりと踏まえて戦うことが大切と強調した。

 現役時代には643試合に出場。試合終盤に相手に与えてしまった勢いが翌日に影響したことが「何回もありますよ」という。その一方で、投手は毎日変わるもので「それを考えすぎて窮屈になられても困る。注意を払いながらです」とも。高谷コーチにとっても初めての経験。選手と一緒になって、試合のリズムを作ろうと考えている。

 的山コーチが復帰するまでの暫定的な措置ではあるが、2021年に現役を引退して、1軍のベンチに“高谷さん”が帰ってきた。「微力ながら、やれることはしっかりとやらせてもらって。いい流れに持っていきたいですね」と謙虚に見据える姿も、高谷コーチらしかった。

(竹村岳 / Gaku Takemura)

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