2か月後に迫る支配下登録期限 期待の育成ルーキー木村光が浴びるプロの洗礼

ソフトバンク・木村光【写真:福谷佑介】
ソフトバンク・木村光【写真:福谷佑介】

小久保2軍監督も評価する右腕だが、ウエスタンLではここまで防御率5.02

 登板機会を重ねるごとに、プロの厳しさを痛感させられている。育成ドラフト3巡目ルーキーの木村光投手は、育成新人として唯一、キャンプからここまで2軍で継続してプレーしている。1軍のローテを争う先発投手が2軍にも控えており、3軍に送られてもおかしくない立場。しかし、小久保裕紀2軍監督からも評価され、中継ぎでの登板を経て、先発機会を得るようになった。

 入団時から、自身の持ち味を「点を取られない所」と話すなど、走者は出しても点を与えない粘り強さに自信を持っていた。投手としての総合力も高く、マウンドさばきも落ち着いている。春季教育リーグでは結果が出ていたが、ウエスタン・リーグ開幕後は8試合に登板し、防御率5.02。徐々に点を取られるようになってきた。今月14日に鳴尾浜球場で行われた阪神戦では先発して4回途中5失点。3回まで1人の走者も出さなかったが、4回に連続四球から逆転満塁本塁打を浴びた。

「結構投げさせて頂いて、思っていたより点数も取られてしまいました。改善していくところは、自分の中ではっきり見えてきたなっていうのはあるんで、そこを改善しつつ、しっかり自分の持っているものを出していけたら」と受け止める木村光。変化球も多彩で、最速150キロの直球に力もある。制球力も持ち味の1つだが、「思った通りに行った球でも抑えられない」とプロの打者のレベルの高さを感じた。追い込むまではすんなりいっても、なかなか決めきれない。ゾーンの中での制球力をさらに磨く必要性を感じた。

 勉強熱心さも木村光の売りだ。コミュニケーション能力が高く、練習後などに先輩の投手に自ら質問に出向いたり、情報交換したりと積極的に会話をしている。「皆さん、自分よりずっと経験してこられているので。自分のピッチングを見て指摘していただいたり、アドバイスして下さったりしてタメになります」と頷く。

 中でも、大きなヒントをくれたのは又吉克樹投手だった。1軍での実績も経験も豊富な右腕のアドバイスで視野が広がった。「又吉さんに身体の使い方について聞いた時に、自分の感覚とは違った視点があって。自分の言いたいことと内容自体は同じなんですけど、考え方がちょっと違うみたいな感じで」と興味深かった。

「自分は、(軸足の)骨盤に貯めて投げるっていうフォームなんですけど、それをするためには投げに行くまでの横の時間(三塁側を向いている時間)を長くしたい。意識的に出来るだけ肩の開きがないようにと考えていたんです。でも、又吉さんは投げたいところに右の骨盤のラインを出していくと言っていたんです」

 又吉の考え方は、右打者のアウトコースに投げる時は右の骨盤を最後まで回転しきるイメージで、インコースに投げる場合はアウトコースに投げるよりも骨盤の回転を浅めにするイメージ。どちらの考え方も、結局は“横の時間”が長くなり“肩の開き”が抑えられるという。最終目的は同じだが、アプローチまでの考え方やイメージの違いに目から鱗だったようだ。

 木村光にとって、最初の支配下登録期限は約2か月後に迫っている。「大卒なんで、1年目とか関係なく、しっかり1軍で活躍していかないといけないと思っているんで、そこはしっかり見据えています」。21日の同リーグ広島戦でも先発予定の期待の育成右腕。充実した2軍生活の中で着々と経験値を上げている。

(上杉あずさ / Azusa Uesugi)