他球団を見ても圧倒的な取材量…西田哲朗広報が伝えたいホークスを取り巻く“野球熱”

ソフトバンク・西田哲朗【写真:竹村岳】
ソフトバンク・西田哲朗【写真:竹村岳】

「ホークスにいるだけでニーズが高いので、取材がぼんぼんと増えていく」

 4月15日、ソフトバンクの西田哲朗広報は自身のインスタグラムのストーリー機能を更新した。添えた写真は、ホワイトボードにびっしりと記された取材の予定。「他球団からも驚かれる取材量」と言葉を添えて、久々にSNSを動かした。西田広報が「広報的にもっと伝わってほしいのが……」と自ら切り出したのは、ファンにもメディアにも、そして選手にも届けたいメッセージだった。

「ホークスってすごい量の取材を受けているんです。ホークスの選手は『他球団もこんな感じなんや』というか『これが当たり前』だと思っていると思うんです。でも(他球団の)話を聞いたら全然違うんです。それだけ九州の人、福岡の人は野球が好きだし、ホークスの注目度が高いから扱われるんだと思うんです。それだけ応援してくれる人も多いということなので、それはちょっと分かってほしいです」

 広報はメディアからの取材依頼を受けて日程の調整や管理を行う。時には状況を踏まえて、断ることも仕事の1つである。例えば複数の球団がある関東圏のメディアなら、露出はニーズによって分散されるが、福岡ではホークスに集中する。西田広報はメディアに向けても「福岡のマスコミしかしたことがない人は、この量が当たり前と思っているかもしれない。選手も取材を受けるのが大変だというのも分かってほしい」と訴える。

「今、取材をしてもらえるのが当たり前というチームなんですよ。他球団はそうじゃなくて、活躍をして、ニーズがないと取材をしてもらえない。でも、ホークスにいるだけでニーズがあるので、取材がボンボンと増えていくんです」

 西田広報は現役時代、楽天でプロ生活をスタートさせた。九州と東北、地方を本拠地にする2球団を比較しても「(野球の熱は)全然違いますね。伝統が違いますから。それはホークスのOBの方々が築いてきたもの」とリスペクトする。だからこそ「いい意味で、これが当たり前と思っちゃいけない」と、広報としても“戦い方”の試行錯誤を続けている。

 一方で選手には、1軍という第一線にいるからこそ、露出してもらえることを感謝してほしいと強調した。広報がどれだけ選手を表に出そうとしても、怪我をしてしまっては話すこともなくなる。西田広報は、長期離脱から第一線に戻ってきた今、取材が集中する“ある選手”を例に挙げる。「名前は出さないですけど……」と明かさなかったのは西田広報の優しさだが、ある程度の察しはつく。

「怪我とかすると、取材はパッタリとなくなってしまう。1か月、2か月ならいいですけど、長期の怪我をしたら忘れられるくらい、本当に一切取材もなくなる。そうなると選手は『あれだけ取材を受けられたのも、第一線にいたから』という考えになっていくと思うんです。そういう経験をした選手ってひと皮むけて、取材の対応も、受け答えのレベルも数段変わっていくと僕は思います」

 過度な注目を浴び、取材が集中すれば「選手も『もういいです』ってなる」と代弁する。だからこそ、野球ができる、注目を浴びることに感謝するように仕向けるのも、西田広報なりに感じている仕事の1つだ。その“ある選手”についても「『怪我してそういう(感謝)の感じるようになった?』って聞いたら『なりました』って本人も言っていました」と明かした。

 選手の成績が一番だが、メディアが選手をスターにすることも、西田広報は理解している。「優勝することが一番の露出。優勝のために、今いろんな取材を通して知ってもらっているところだと思ってやっています」。グラウンドで戦う選手のために、動いてくれるスタッフがたくさんいる。全てが報われて、この喜びを全員で分かち合いたい。

(竹村岳 / Gaku Takemura)