【連載・甲斐拓也】千賀滉大“メジャー初登板”の裏側 やっぱり電話はかかってきた?

ソフトバンク・甲斐拓也【写真:藤浦一都】
ソフトバンク・甲斐拓也【写真:藤浦一都】

今季23試合目で初めてベンチスタート「もちろん悔しさはありますけど…」

 ホークスの4選手が毎週登場し、野球や私生活のことなどを語る鷹フル月イチ連載、甲斐拓也捕手の5月度「後編」です。ここまで27試合を戦い、14勝12敗2分けのチーム状況を正捕手としてどう感じているのか。メジャーリーグで早くも4勝をマークしている盟友・千賀滉大投手についても語りました。次回の甲斐選手の月イチ連載は6月5日(月)に掲載開始予定です。

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 ソフトバンクはここまで貯金2で、オリックスを2ゲーム差で追う2位につけている。開幕5連勝の絶好のスタートダッシュを切りながら、4月18日の西武戦から5連敗、さらに4月29日の日本ハム戦から4連敗を喫するなど、なかなか波に乗り切れない戦いが続いている。

 とはいえ、まだ5月もゴールデンウィークが終わったばかりで116試合も残っている。目先の1勝や1敗に過敏に反応し、一喜一憂する時期ではないのも事実で、甲斐も「まだまだ先は長いんで、連敗が続いたりはしましたけど、まだこれからだと思っています。どうしても負けが続くと(重い雰囲気は)出てきちゃうところはありますけど、そうならないようにしていますし、チームの雰囲気も悪くないんじゃないですかね」と語る。

 甲斐自身は開幕からスタメンでマスクを被り続けたものの、今季23試合目となった5月2日のオリックス戦で初めてスタメンから外れた。翌3日の同戦もベンチスタート。「もちろん悔しさはありますけど、自分が出てチームが負けたりしていましたし、受け入れないといけないところはあると思っています。嶺井さんの姿を見て学ぶところもあると思っています」と受け止め、ベンチから戦況を見守った。

 その2試合もチームは敗れる結果になった。メインでマスクを被る立場として「毎日ミーティングをして(バッテリー陣で)どうしようかと話し合ってやっている。そのミーティングをもとにして、ゲームの中で表現していくようにしているので、全てがその場の思いつきでやっているわけじゃないので。チームで、ホークスの捕手陣で考えてやっている」と、試合に出ていなくとも責任を感じていた。

 長く苦しいペナントレースの真っ只中で刺激をもらっている人物がいる。盟友の千賀滉大投手(メッツ)だ。「もちろん応援していますし、どんな感じなのか聞いたりもします。常に気にはかけています」。2010年の育成ドラフト同期入団の右腕は育成選手として初めて、今季からメジャーリーグでプレーし、ここまで6試合に先発。すでに4勝(1敗)をマークし、メッツのローテを担っている。

 その千賀がメジャー初先発を果たしたのは4月2日のマーリンズ戦。試合開始時間は日本時間で3日の午前2時40分だった。千賀は現地で「(友人、知人に)電話をかけて叩き起こします」と語っていたが、ロッテ戦後に甲斐は「(電話が)かかってきたら出ますよ。でも、大丈夫だと思います。怪我なくやってもらいたいですね、見るかどうか置いといて」と“生観戦”には消極的な雰囲気を滲ませていた。

 だが、実際には深夜まで眠ることなく、しっかりと千賀の初登板をテレビで見届けたという。千賀から電話がかかってくることはなかったが、「LINEは来ました。『見てね』という感じの内容でした」と当然のごとく連絡はあった。ホークスは2日にデーゲームでロッテと戦って5-3で勝利。幸いにも3日は試合がなく、大阪への移動日だったこともあって、盟友の勇姿を目に焼き付けた。

 広く知られた“せんたくコンビ”の間柄。千賀の渡米直前の1月には、PayPayドームのブルペンで甲斐が千賀のボールを受けて“惜別”した。2011年のプロ入りから12年間、戦ってきた千賀の存在を「一緒に過ごしてきて、良いも悪いも味わってきた。お互い声を掛け合ってやってきた特別な存在」と改めて語る。

 千賀という男についても「毎日、野球選手として少しでもレベルアップしようとする姿には刺激をもらってきましたし、そういう姿はこれからも変わらないと思います」と表現する。千賀がいたからこそ、甲斐もここまで成長することができた。

 日本も米国もまだシーズンは始まったばかり。ホークスはパ・リーグで、メッツはナショナルリーグで頂点を目指して戦っていく。オフには最高の結果を手にして、相棒と再会を果たしたいものだ。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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