【連載・栗原陵矢】果たされた周東佑京との“約束” 強くなったWBCとメジャーへの思い

ソフトバンク・栗原陵矢【写真:藤浦一都】
ソフトバンク・栗原陵矢【写真:藤浦一都】

芽生える自覚と9年目の覚悟「9年間チームのことを見てきた中で…」

 左膝前十字靭帯断裂の大怪我から復帰を果たした栗原陵矢外野手の月イチ連載「後編」は、副キャプテンとして戦うシーズン、テレビを通して見たワールド・ベースボール・クラシック(WBC)、メジャーリーグへの思いなどを語った。次回の栗原選手の月イチ連載は5月15日に掲載予定。

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 大怪我から復帰した2023年シーズン。目を引くのは随所で大きな声を出してチームを引っ張ろうとする栗原の姿だ。今季から守るようになったホットコーナーから投手に声をかけ、ベンチでも大声を張り上げる。キャンプ中からムードメーカーとして、チームの盛り上げ役となってきた。

 キャプテンの柳田悠岐外野手を支える副キャプテンとして心掛けていることは「全然ない」という。献身的にチームを盛り上げようとする姿勢も「若い選手と一緒になって馬鹿やっていこうという感じ」と特別に意識して実行しているわけではない。自身が果たすべき役割として捉えているだけだ。

 そこには昨季限りでホークスを退団した大先輩へのリスペクトがある。「もう僕も9年目になりますし、9年間チームのことをずっと見てきた中で、こういうことをしていかないといけないな、というのがある」という。存在の大きさを感じていたのは、やはり昨季限りで退団し今季は巨人でプレーする松田宣浩内野手だ。「松田さんの存在は大きいですね」。長らくホークスを支えた“元気印”がチームを去り、自分が後継者になりたいとの思いが栗原を突き動かす。

 新たな目標もできた。3年後に予定されている「第6回ワールド・ベースボール・クラシック」への出場だ。2021年に侍ジャパンの一員として東京五輪の金メダル獲得に貢献したが、3大会ぶりの世界一となった今回のWBCは怪我の影響もあり、出場できなかった。コンディションが万全であれば、当然、候補となってもおかしくはなかったが、回復が間に合わなかった。

「イチ野球人として結構(WBCは)見ました」。チームメートの甲斐拓也捕手や周東佑京内野手、近藤健介外野手、牧原大成内野手が奮闘する姿を見て「3年後出ます。より一層、出たい思いは強くなりました」。もともとメジャーリーグへの関心も深い。このオフは単身、米国へと渡り、メジャーリーガーたちもやって来るトレーニング施設でトレーニングに励んでおり「メジャーももちろん目指しています」と明かす。

 WBCに出場した仲の良い周東との“約束”も果たされた。2月のキャンプ中に「メジャーリーガーのサインを貰ってきて。トラウトの」と、マイク・トラウト外野手(エンゼルス)のサインをおねだりしていた。1か月半に及んだ侍ジャパンでの活動を終えてチームに帰ってきた周東から渡されたのは、なんとそのトラウトのサイン。水原一平通訳を通じてサインをゲットしてきてくれていた。

 仲間たちの活躍、そして目標にするメジャーリーガーの姿に、3年後への思いを強くした栗原。まずは怪我から復帰した今シーズンを無事に戦い抜き、侍ジャパンに再び選ばれるような存在になっていきたい。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)