斉藤和巳コーチが語る“負けない”術 東浜が抑えられなかった「試合のポイント」

5回途中でマウンドを降りたソフトバンク・東浜巨(左)【写真:矢口亨】
5回途中でマウンドを降りたソフトバンク・東浜巨(左)【写真:矢口亨】

「巨くらいのピッチャーであれば、少なからず追いついてもらったあとは抑えて欲しい」

 ホークスファンの悲鳴と、ライオンズファンの歓声が入り混じった。19日にベルーナドームで行われた西武戦。2-3でソフトバンクが競り負ける結果となった一戦で、勝負の分かれ目となったのは4回の攻防だった。

 1点ビハインドで迎えたホークスの攻撃。2死から中村晃外野手が中前安打で出塁すると、打席にはこの日1軍に昇格、即スタメン起用された増田珠内野手が入った。隅田が投じた初球を捉えると、打球は左中間を破る適時二塁打に。“元気印”の今季初安打で同点に追いつき、ベンチのムードは一気に盛り上がった。

 だが、その裏、先発の東浜巨投手が西武打線につかまる。1死から中村に中前安打を浴びて出塁を許すと、続くマキノンに内角低めシンカーを左翼スタンドへと運ばれた。勝ち越しの2ランを浴び、再びビハインドを背負うことに。結果、最後までこの一発が重くのしかかり、チームは2連敗。今季初めてカード負け越しを喫した。

「巨くらいのピッチャーであれば、あそこはしっかり止めて欲しい」

 試合後、こう口にしたのは斉藤和巳1軍投手コーチだ。2度の沢村賞に輝いた実績を誇る斉藤和コーチは「試合の流れの中でポイントって絶対にある。そのポイントをしっかり抑えておけば、負ける確率っていうのは下がるからね。そこのポイントを抑えきれないと、やっぱりこういう展開になる」という。“流れの中でのポイント”――。この日の試合で言えば、まさにこの4回がそれだった。

「やっぱり味方が追いついてくれたあとだからね。そのあとのホームランとなると、ちょっとチームの士気っていうところは出てくる。あとはよく粘ったけど、あそこじゃない?」。3回までゼロ行進が続き、隅田に苦戦する中で、追いついた直後に突き放される。斉藤和コーチから見ても、投手としてはやってはいけない“ミス”だった。

「試合には流れっていうのがあるから。それを巨も絶対に分かっている。分かっているけど、今日はそれが止められなかった。巨くらいのピッチャーであれば、あそこはしっかり止めてほしい。少なからず追いついてもらったあとは抑えて欲しいなっていうのは正直ある」とも斉藤和コーチは語る。柱として期待する東浜だからこそ、抑えてほしい場面だった。

「同点になった次のイニング、そこだけをしっかり投げるってね。これは(東浜)巨だけじゃなくて、ローテーションピッチャーみんなそうだと思うけど、それが野手と投手の信頼関係になっていくんじゃないかなと思います」というのは藤本博史監督。同点に追いついた直後の失点。悔やまれる1球だった。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)