OP戦で打率.357でも「1軍のレベルではない」 川村友斗が感じた1軍の違いと葛藤

ソフトバンク・川村友斗【写真:竹村岳】
ソフトバンク・川村友斗【写真:竹村岳】

オープン戦で打率.357…1軍の先輩から学んだ徹底的な準備

 3月の大活躍から1か月が経ち、もう一度地に足をつけて支配下登録を目指している。ソフトバンクの川村友斗外野手はオープン戦で学んだことを「野球の楽しさです。学んだというか、プロ野球選手になれた以上はあの舞台でやりたいって気持ちが強くなった。せっかくホークスのユニホームを着られたので、PayPayドームで野球ができないで終わるのはもったいない」と振り返った。

 3月のオープン戦で打率.357、1本塁打を記録した。3月9日のヤクルト戦(PayPayドーム)では右中間スタンドにソロアーチを放ち、ダイヤモンドを一周。「あの大声援の中で、レギュラーシーズンでもあの舞台でやりたいなって思いました」と今でも忘れない景色だ。

 充実すぎる1か月の中で1軍で戦う先輩たちの野球に取り組む姿勢は、自分の想像を遥かに超えていた。

「栗原さんなんて、レギュラーじゃないですか。でも朝早くからドームにいてバッティングをしていたり、普通にアーリーワークをしているのを見たら、僕はもっとやらないといけないと思いました。コーチや監督から『1軍はもっとやっている』と聞いていたんですけど、間近で初めて見て。『やってる』『やってる』って言っていたのが、本当にやっているんだって目の当たりにしました」

 どれだけ指導者から聞かされても、実際にその姿を見る以上に、実感できる方法はない。育成選手は1軍の試合には出場できないだけに、初めて見るレギュラーの取り組みは全てが驚きだった。「柳田さんでさえアーリーワークに来て、中村晃さん、今宮さんもアップはめちゃくちゃ早い。一番はそこです」と続ける。1軍レベルの投手の球にももちろん驚いたが、徹底的な準備を重ねる先輩たちに追いついていかないといけない。その距離感を実感できたことが、最大の収穫だった。

 オープン戦の終盤、開幕1軍から漏れた選手1人1人に藤本博史監督は声をかけた。川村も「状態が良かったら勝負できるのはわかった」と評価された一方で、“宿題”をもらったという。「左の外野手はすごい先輩がいるので『まずは2軍で結果を残して支配下を勝ち取ってくれ』という感じで言われました」と明かす。柳田悠岐外野手や近藤健介外野手ら、そこに割って入っていかないと自分の居場所は確立できない。

 4月となり、川村は今どんな状況にいるのか。ウエスタン・リーグでは打率.208、1本塁打。オープン戦での活躍を思えば、少し苦しんでいる印象で、本人も「もっと本当は打たないといけない。1軍で打てて、2軍で打てていないので。気持ち的にも焦ったりした部分もあるんですけど、なんとか頑張っていけたら」と心境を吐露する。その焦りも、育成選手ならではのものだ。

「2軍で本当に打てていないので。ホークスは競争もあって、3軍も4軍もあるので。うかうかしていたら3軍にいってしまう。育成選手なので、結果が出ないもどかしさと、入れ替えもある焦りを感じつつも、頑張っています」

 ウエスタン・リーグの公式戦には育成選手は5人しか出られない。今月14日からの阪神3連戦(タマスタ筑後)で川村のスタメンは1度もなく、中村亮太投手、木村光投手、緒方理貢内野手、勝連大稀内野手、そして川村が2軍メンバーとして出場していた。今季から4軍制が設立されたことで、2軍のレギュラー争いすら激しくなっていることは、グラウンドにいる川村が一番わかっている。

「今、本当に1軍どうこうというレベルではない。2軍でも試合に出られていないので、まずは2軍の試合に出るのが一番最初の目標です。まずは2軍で出られないと、結果すら残せない。ゆくゆくは支配下ですけど、そこが一番です」

 1軍で見た全てが、今のモチベーションになって自分を支えている。危機感も希望もしっかり持って、今は2桁の背番号だけを目指している。

(竹村岳 / Gaku Takemura)