【連載・周東佑京】仲が良いから分かる栗原陵矢の変化と凄さ 副主将と叶えたい“夢”

ソフトバンク・栗原陵矢(左)と周東佑京【写真:竹村岳】
ソフトバンク・栗原陵矢(左)と周東佑京【写真:竹村岳】

同時期にリハビリ組も「早く戻んなきゃと思っていたので、精いっぱいだった」

 鷹フルでは2023年シーズン、4人の選手に毎月インタビューを行い、月イチ連載としてホークスの1年の戦いを追いかけていく。前回の甲斐拓也捕手に続く2人目・周東佑京内野手の中編のテーマは「副キャプテン栗原陵矢」について。開幕から活躍が止まらない盟友は同時期に1軍での居場所を確立し始めた間柄。昨季のリハビリ時代に感じたことや2人の関係性について明かした。

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 栗原陵矢は3月のオープン戦で打率.415で首位打者となると、開幕以降も打率.300、3本塁打、13打点と打ち続け、スタートダッシュを切ったチームを牽引している。WBCに参加していた周東はオープン戦出場はできなかったが、「いや、すごいっす。すごいなって思いながら見ています」と唸るしかなかった。

 栗原は昨季3月30日のロッテ戦(ZOZOマリン)で左膝の前十字靭帯を断裂するなど大怪我を負った。その時期は周東も2021年9月に受けた「右肩関節鏡視下関節唇形成術」から復活を目指していた時期だった。同じリハビリ組となり「僕は試合にも行っていたのでちょっとしか見ていないですけど、何もできない気持ちは分かります」と共感する。過去には「同級生みたい」と話すなど、親交の深い後輩が強いられた長期離脱に胸を痛めていた。

 周東は2022年5月に1軍復帰を果たした。栗原が入院生活を終えて筑後に戻ってきた時には復帰がかなり明確に見えていた。入れ替わるようにして大怪我を負い、長いリハビリ生活に入った栗原を「僕は上半身の怪我だったので下半身は動かせた。でもクリの場合は日常生活にも支障があるような怪我だった。そんな中でも、グラウンドにきたらみんなと明るくというか、話している姿を見ていました。きついだろうなとは思いながら、でも、アイツはみんなにそういう素振りは見せなかった」と見ていた。

 具体的な連絡や声かけも「僕はそんな余裕はなかったです。早く戻んなきゃと思っていたので、僕のことで精いっぱいだった」と、することはできなかった。その時、自分にできたことは1日も早く1軍に戻ることだけだった。お互いに怪我を乗り越えた今、ともに戦力として勝利に貢献している。レギュラーを目指す立場から、お互いに少しずつチームを「勝たせる」立場になってきた。

 長谷川勇也打撃コーチは、栗原の結果はもちろん、試合までの取り組みに「頭と体と技術、3つの全ての部分でちゃんと準備をしている」と評価していた。明るいキャラクターが印象的な栗原だが、その徹底的な姿勢もチームを引っ張れる要因の1つだ。周東も、怪我を乗り越えて、今季から副キャプテンにもなった栗原の変化を敏感に感じ取っている。

「やるべきことは全部やっている感じはします。準備の段階から、自分がこうしないといけないとか、副キャプテンになって自分の立ち位置も分かっていると思います。みんなを引っ張っていかないといけないのを彼はわかっていると思いますし、やるべきことを全部やって1試合1試合臨んでいると思います。相手の投手の映像も全部頭に入っていると思いますし、そんな感じですかね」

 年齢は周東が1歳年上だ。「2軍の時もそうですけど、年も近かったので話す機会が多かった」と、特別な出来事はなくとも自然に関係は深まっていった。栗原が32試合に出場した2019年は、周東も支配下登録を勝ち取って25盗塁を記録。「出始めも同じくらいでしたし、お互いに怪我をして」と歩んできた道のりまで似ている。いつか栗原と一緒に、ホークスの太い柱になりたい思いがある。

「クリもああいうふうに今年は戻ってきて、負けられないなと思います。クリくらい僕もやりたいです。負けられないというか、一緒に引っ張っていけたらなって思いはありますね」

 周東自身は、開幕して10試合を終えて打率.273、4盗塁のスタートを切った。ホークスの新しい顔になろうとしている2人の活躍を、ファンもきっと心から喜んでいる。

 周東の月イチ連載後編は4月19日火曜日に公開予定です。

(竹村岳 / Gaku Takemura)