速さだけなら周東佑京を超える? 育成4年目・舟越秀虎が専門家の下で遂げた進化

ソフトバンク・舟越秀虎【写真:上杉あずさ】
ソフトバンク・舟越秀虎【写真:上杉あずさ】

スプリントコーチの下で自主トレ…「自分でもビックリするくらい速くなった」

 ソフトバンクの育成、舟越秀虎外野手が“周東超え”を目指して4年目に挑んでいる。俊足が持ち味の21歳が掲げる今季目標は「60盗塁」。昨季は2、3軍の試合を通じて38盗塁を決めた。「50盗塁」を目標にしていたため満足はできなかったが、与えられた場面で持ち味を発揮。今季はさらに10個上乗せした目標を設定した。確かな自信が芽生え始めているからだった。

 ただでさえ足の速い舟越が「自分でもビックリするくらい速くなった」と言うのは、オフの自主トレの成果だった。“一芸”をより秀でたものにするため、アスリートのスプリントコーチである大阪経済大の九鬼靖太准教授に師事した。九鬼氏はサッカーや陸上・短距離走の日本代表選手の指導歴もある。専門家の下での自主トレは目から鱗の連続だった。

 教わったのは、走る際の足の運び方。舟越はそれまで走る時に足を大きく前に出すようにしていた。その分、足裏で地面を「後ろにかく」動きとなり、力のロスになっていた。ロスをなくすために「足は前に出すのではなく、身体の真下に出すように」との指導を九鬼氏から受けた。

 新たな“走法”を身につけた舟越は成果を実感している。ここまで3軍、4軍で13試合に出場して11盗塁をマーク。1試合1盗塁に近いペースで走りまくっている。4日の徳島インディゴソックスとの4軍戦では、投手のモーションを完璧に盗み、三盗にも成功。その後の投前内野安打で颯爽とホームインした。

 チームで唯一、足で意識するのは野球日本代表「侍ジャパン」の一員としてワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の優勝に貢献した周東佑京内野手だ。周東がファームにいる際、一緒に走る機会があった。「ビックリしました」。小さい頃から足で隣に並ばれたことがなかった舟越は衝撃を受けた。育成から日本代表にまで上りつめた先輩は本当に速かった。ただ、その一方でスピードだけなら対抗できるとも感じた。

「夢はでっかくじゃないけど、いずれは自分も侍ジャパンの一員になるんだくらいのことを思ってほしい」と話すのは小川史4軍監督だ。50人を超える多くの育成選手を抱えているソフトバンクで3、4軍の選手が1軍で活躍するのは年々難しい状況にになっている。それでも大きな夢に向かってモチベーション高く取り組むことが大切だと語る。

 憧れの選手像は日本ハム・新庄剛志監督だ。舟越は熊本の城北高時代、俊足を生かすために投手から外野に転向。当時は、投手でのプロ入りを目指していたため「外野手転向」を通達された時は心が折れそうになった。そんな時に新庄監督の現役時代のプレーを見て「あんなヒーローになりたい」と憧れた。パワーアップした自身の武器で最大限にアピールし、まずは支配下登録への階段を駆け上がってみせる。

(上杉あずさ / Azusa Uesugi)