育成2年目となったシモンが抱かせる期待感「全て去年よりレベルアップ」
成長目覚ましいドミニカンが期待を抱かせてくれている。昨季ソフトバンクに入団し、ドミニカ共和国から来日したマルコ・シモン外野手は2年目のシーズンを充実感たっぷりに過ごしている。
ソフトバンクは昨季から、外国人選手を若いうちに獲得し、数年かけてチーム内で育てる補強戦略を開始した。その先駆けとして最初に入団発表されたのが、シモンだった。アレクサンダー・アルメンタ投手、マイロン・フェリックス投手、フランケリーノ・ベラルディーノ内野手らと共に昨年3月に入団会見。その後、昨季途中にルイス・ロドリゲス投手、今季からはホセ・オスーナ外野手も加わり、外国人育成選手は現在6人となっている。
若いうちから母国を離れ、プロとして成功するために努力を重ねる5人の育成外国人選手。中でも、高いコミュニケーション能力と積極性でチームに溶け込み、成長を遂げているのがシモンだ。
「全て去年よりレベルアップしたと思います。ウエートトレーニングが特に良かったと思います。オフにドミニカに帰ってからも、日本で学んだように練習してきました」と笑顔を見せる。見るからに打撃面でもパワーアップし、守備力も向上中だ。
森山良二3軍監督は、シモンについて「打球の強さもあるし、すごく期待しています。守備も足もいいし、一生懸命やってくれる。何しろ明るいしね。お風呂でもキャッキャ言って陽気に喋っているよ。あの若さで、慣れない異国の地での生活なのに。すごい楽しみですね」と目を細める。
異国の地で目覚ましい成長を遂げられている一因に、首脳陣も評価する明るさもあるだろう。日本選手たちと積極的にコミュニケーションを取り、日本語も意欲的に覚えている。ホームシックどころか若鷹たちの笑いの中心にいることも少なくない。無類の人懐っこさで、自らのびのびできる環境を作っている。
朝の集合時には「おはようございます」「よろしくお願いします」とスタッフに日本語で挨拶する。ノックでミスした時も「すみません」「もういっちょ」と日本選手と同じように振る舞う。ロングティーでは力強い打球を放ち、スタンドインしたら無邪気に喜ぶ。コーチ陣に日本語で「見て見て!」と子どものようにはしゃぐ姿も愛くるしい。「日本の野球を経験して全て変わったと思います。メンタル面も含めて全て変わりました」。日本に愛着を持ち、WBCでも侍ジャパンの世界一を心から喜んだ。
今年からは同じ外野手にドミニカの“後輩”オスーナが加わった。16歳ながらガッチリした体格とパワーから「近い未来、メジャーで数億稼ぐ選手になるだろう」と周囲からの期待も大きい。強力なライバルが加入したが、シモンは「オスーナは仲間。彼はまだ若いけど、身体も自分より大きいですし、すごくいい選手だと思います。ライバルじゃなくて仲間なので、僕が教えられることは伝えていきたい」と、1年早く来日した先輩として学んだことは惜しみなく伝えている。
森山3軍監督は「打球速度も速いし、化けてくれないかな。昔、広島からヤンキースに行ったソリアーノみたいになってくれないかな」とシモンの将来像を想像。広島が所有するドミニカの野球スクール「カープアカデミー」出身で、のちにメジャーで40本塁打40盗塁を達成したアルフォンソ・ソリアーノ外野手の名前を挙げる。期待しかない18歳のシモンが“ジャパニーズドリーム”をつかむ姿を見てみたい。
(上杉あずさ / Azusa Uesugi)