ビジョンに映る「打撃一閃」 近藤健介が長谷川勇也コーチの演出を“継承”したワケ

ソフトバンク・近藤健介が打席に入る際、映し出される「打撃一閃」の文字【写真:竹村岳】
ソフトバンク・近藤健介が打席に入る際、映し出される「打撃一閃」の文字【写真:竹村岳】

長谷川勇也打撃コーチの代名詞「打撃一閃」を今季は近藤が演出として使用

 師匠の生き方の全てを、プレーで受け継ごうとしている。ホークス加入1年目の近藤健介外野手だ。開幕から結果を出し続け、5試合を終えて打率.421、1本塁打、7打点と打線の核として5連勝のチームを牽引している。5日のオリックス戦(京セラドーム)でも3打点と活躍し「勝ちゲームが続いていましたけど、早い段階での先制点はなかったので。そういう意味でもよかったと思います」と振り返っていた。

 近藤が本拠地PayPayドームの打席に入る前、バックスクリーンの大型ビジョンには「継承」「打撃一閃」の文字が映し出される。「打撃一閃」と言えば、長谷川勇也打撃コーチの現役時代にもビジョン演出に用いられていた代名詞だ。長谷川コーチを「師匠」と慕う近藤が同じ言葉を受け継ぐ形で、本拠地PayPayドームの打席へと向かっている。

 近藤は昨季オフに海外FA権を行使した。各球団と交渉が進む中で、ホークスとの交渉の席にフロント陣と同席したのが長谷川勇也打撃コーチだった。近藤も入団会見の場で「長谷川コーチはホークスの厳しさや重圧、厳しい面もお話をいただいて。そういう存在がいるのは僕の中では大きいと思っています」と話すなど、鷹入りの決め手と語るほどの存在だ。

 そんな近藤がどんな経緯で演出において長谷川コーチの「打撃一閃」を受け継ぐことになったのか。

 球団の担当者によると、ビジョン制作チームは近藤に2度にわたってヒアリングを行った。1月に自主トレが行われていた鹿児島・徳之島までビジョン制作チームは足を運ぶと、実直な近藤らしい希望が返ってきた。関係者によると「自分のスタイルとしても、真剣とか真面目に、ちゃんと優勝するチームに入って頑張りたいという思いがある。おちゃらけたような演出よりは真剣な演出がいい」と伝えられたという。

 2度目のヒアリングは春季キャンプ中。そこで球団側から「打撃一閃」を用いることを提案し、長谷川コーチの現役時代のビジョン映像も実際に近藤に見せたという。関係者も「『ああいうテイストでやれたらと思っていますけどどうですか』と話したら『是非お願いします』ということだった」とやり取りを明かす。力強い返事からも、近藤がどれだけ長谷川コーチを慕っているのかも伝わってくる。

 近藤の存在には長谷川コーチも「出塁率は高いし、うちは1番打者が固定できていない中で、安定感のある打者が2番にいることで、1番は色々トライできる」と全幅の信頼を寄せる。“打撃一閃”にふさわしい成績を残していけば、近藤は師匠のようにホークスファンに愛されるはずだ。

(竹村岳 / Gaku Takemura)