驚異の4戦3発…栗原陵矢は「結果が出て当たり前」 長谷川勇也コーチが語る進化の背景

ソフトバンク・栗原陵矢【写真:藤浦一都】
ソフトバンク・栗原陵矢【写真:藤浦一都】

長谷川勇也打撃コーチが語る「基本と応用」…栗原陵矢ができていること

 ソフトバンクが開幕4連勝を飾った。4日に京セラドームで行われたオリックス戦も6-1で快勝。好調のチームの中でも勢いよく開幕ダッシュを決めたのが栗原陵矢外野手だ。3月31日のロッテとの開幕戦で6回に先制1号3ラン。4月1日の2戦目でも3安打3打点と結果を残すと、この日のオリックス戦でも3号2ランを含む2安打3打点。4試合を終えて打率.438、3本塁打、9打点とバットが火を吹いている。

 昨季の3月30日のロッテ戦(ZOZOマリン)で左膝を負傷して、長いリハビリ生活を乗り越えた。それでも、まだまだ「怪我明け」と呼べる段階だろう。実戦の間隔が1年ほど空いたにも関わらず、なぜここまで結果を残せるのか。長谷川勇也打撃コーチは「ただリハビリするだけではなくて怪我が治った時にはどうなっていたいのかという意思を持っていた」と、リハビリ期間の取り組みを語る。鍵として挙げたのは打撃の“基本”と“応用”だという。

 長谷川コーチなりに考える打撃の“基本”を聞くと「ホームラン競争ですよ」と切り出した。ホームラン競争なら苦手な球には手を出さずに、スタンドにまで運べる確率の高い球を待つ。自分がどのコースなら確率が高いのかを理解して、スイングの再現性を極限にまで高めることが基本だと強調した。

「ホームラン競争をしてくださいと言われたら、どのボールを待ちますか? 確実に自分の強いスイングができるような球を待つと思うんですけど、それが10球来たら10球打てるような。人それぞれ“ツボ”がある。それが基本です。そこにきたら自分のベストスイングが確実にできる、ホームラン競争なら、そこを要求するというようなところです」

 そして、応用の部分だ。当然、試合となれば、相手投手は打たせないように工夫を凝らしてくる。データも踏まえて、苦手なコースも突いてくる。長谷川コーチは「ホームラン競争のように自分のスイングをしようとする中で、違う球がきた時に『こっちもやっちゃえ』みたいな」と表現する。投手との一瞬の間合いの中で、引き出しを多く持っていることが応用の領域だとした。

 栗原はオフに米国を訪れるなど、刺激を受けて帰ってきた。WBCでの大谷翔平投手(エンゼルス)の活躍にも「やっぱりフィジカルのすごさ」と話すなど、肉体強化に焦点を当ててきた。長谷川コーチも「ツボはもちろん持っている。応用のためには、フィジカルが必要と感じたんでしょうね」と代弁する。その効果として「逆方向の飛距離が強くなった。逆方向って結構フィジカルの要素が強い。リハビリで鍛えてきた部分が出ている」と認めている。

 オープン戦期間中、長谷川コーチは若手について「結果を出している選手はちゃんとやっている。準備という点で、当たり前のように。結果を出せていない選手というのは、その準備ができていない」と評価したことがあった。その中で、栗原は結果を出すための準備ができている何よりの証明。長谷川コーチの目から見ても、栗原は心技体を兼ね備えている。

「自分の打撃感覚を追い求めて磨くこともそうですし、自分のコンディションを整えることももちろんやっています。あとは対戦する投手の予習というのもちゃんとやっているので。頭と体と技術、3つの全ての部分でちゃんと準備をしているので。結果が出て当たり前じゃないですか」

 もはや栗原がいる領域は、長谷川コーチに言わせれば「やることをやっていたら打つのは当たり前なので。打てなかったら打てなかったで仕方ない。今の結果は彼の中では当たり前」という。勝負の世界は紙一重であり、必ず結果が出る。「ダメだとしても、やることを継続することはどんな状態でも変わりないと思います」と、栗原の姿勢はどんな調子となろうが間違いじゃないと太鼓判を押した。

「今の結果には何も驚かないです。それ(心技体)しかないですよ。運じゃやっていけない、結果は出せないですから」と長谷川コーチ。今の栗原の活躍は“神がかり”でもなければ「好調」という言葉にもおさまらない。プロ野球選手として突き詰めてきた全てが、今グラウンドで結果になっているだけだ。

(竹村岳 / Gaku Takemura)