なぜ正木に代打・中村晃だったのか? 長谷川コーチが語るベンチの思惑と若手の“物足りなさ”

ソフトバンク・正木智也【写真:竹村岳】
ソフトバンク・正木智也【写真:竹村岳】

DeNAに逆転勝利も8回には正木に代打…長谷川コーチが語った狙い

 ソフトバンクは19日、本拠地PayPayドームで行われたDeNAとのオープン戦に4-2と逆転勝ちした。同点に追いつき、なおも8回2死一、二塁のチャンスでベンチは正木智也外野手に代打・中村晃外野手を送った。この起用について、試合後、藤本博史監督は「本番モードと言いましたよね。勝つためには分かっていますよね、同点なんだから」と狙いを明かした。

 0-2で迎えた8回だった。三森大貴内野手の適時二塁打と柳田悠岐外野手の犠飛で同点に追いつき、なおも2死一、二塁と一打勝ち越しのチャンス。正木を迎えたところで、DeNAベンチは左腕の石川から右腕の三浦へとスイッチした。この日、正木は3打数1安打だったものの、ホークスベンチは迷わず中村晃を打席へ送った。この中村晃がきっちり四球を選ぶと、続く上林誠知外野手が右前へ2点適時打を放って勝ち越しに成功。采配が的中した一方で、ベンチの正木は悔しそうな表情を浮かべつつ、チームの勝利のためにベンチで声を出していた。

 まだオープン戦ながら、藤本博史監督は17日の試合から本番さながらに勝ちに行く姿勢を打ち出していた。長谷川勇也打撃コーチもこの代打策について問われ「勝ちに行っている。そういう時期なので、オープン戦だからとか、負けてもいいとか、そういう試合じゃない。それは円陣の時にも言いました」と勝ちに行くために必要な策だったと強調した。

 この日は6回の攻撃前に円陣を組むなど、チームとしても本番を想定した試合運びとなっていた。長谷川コーチは「技術的なところは、開幕に入っても戦えるだけのものはついてきた。あとは勝ちにいく姿勢をもっと強くしていかないと」とも続けた。

 開幕に向けて技術も姿勢も仕上げの段階にある。藤本監督も状態がいい選手を「栗原と(中村)晃だけ」と表現するなど、若手のアピールが物足りないのは明らかだ。近藤、甲斐、周東、牧原大とWBC組がいないからこそ、指揮官も「覇気を出してもらいたい」と求める。そんな中で現状の若手たちの姿は、長谷川打撃コーチの目にはどう映っているのか。

「これだけ試合に出られて、結果を出すための準備が足りないんじゃないですかという話。そんな甘い世界じゃない。結果を出すためにも、結果を出している選手はちゃんとやっている。当たり前のように。準備という点で。でも結果を出せていない選手というのは、できていない。そういう世界で生きているから」

 とにかく強調したのは、準備の大切さ。若手に結果が出ていないことについても「その選手の責任」とキッパリと言い切る。現役時代は通算1108安打を放ち、打席の中でも侍のような集中力を見せていた長谷川コーチは、藤本監督の「覇気」という言葉にも触れながら、こう続けた。

「試合に対してしっかりと準備をして、自分の中でプランを持って、ゲームに入れれば、入り込めると思うんです。入り込めていないから、多分(監督にも)そういうふうに見えてしまう。入り込むためには、何が必要か。オープン戦だろうが、シーズンだろうが、やっぱりやるべきことをしっかりやっていくことで、ゲームにも入り込んでいけると思う。そうすれば、より集中力が高まると思うし、覇気がないようには見えないと思います」

 ベンチで悔しさを滲ませていた正木がPayPayドームを後にしたのは午後6時30分。試合が終わってから、実に3時間近くが経過していた。試合後はマシン打撃とウエートトレーニングに励んでいた。代打に「仕方ないです」と前を向いた正木。味わった悔しさは、必ず違う形で晴らしてくれるはずだ。

(竹村岳 / Gaku Takemura)