人生初の外野にも挑戦 育成4年目・石塚綜一郎がユーティリティ捕手を目指す理由

ソフトバンク・石塚綜一郎【写真:上杉あずさ】
ソフトバンク・石塚綜一郎【写真:上杉あずさ】

「バッティングを生かすためには、試合に出ないといけない」

 何としてでも這い上がろうとする強い決意が言葉ににじむ。育成4年目を迎えたソフトバンクの石塚綜一郎捕手は“谷川原方式”でアピールすることも視野に入れている。

 打撃が持ち味の石塚は入団からこれまでも3軍で一塁や三塁を守ってきた。高校までは投手で、内野手も務めるユーティリティプレーヤーだ。今季は捕手として勝負するため、オフには森唯斗投手、嘉弥真新也投手らの自主トレに参加し、捕手として足りないものを吸収した。持ち味の打撃を生かすのは当然で、捕手としてのレベルアップに力を注いだ。

 ところが、今春の筑後キャンプでは内野や外野の練習をする姿が度々見られた。「どこでも行けます。ファースト、サードはやっていたので次は外野です。外野だけはやったことがないですけど、特打まで終わったら、外野の練習もやらせてもらいます」と全体練習と与えられた個別練習が終わってからも、志願して“外野特守”を受けていた。

 というのも、筑後のC組では外野手を中心に怪我人が続出している。制限なく動けるのはマルコ・シモン外野手だけ。ホセ・オスーナ外野手は15歳ということもあり、練習メニューには一部制限がかかっている。山本恵大外野手もリハビリ組からの参加となっている。

 その現状を見た石塚は「上で勝負していくには、やっぱりキャッチャーが一番だと思うんですが……」と捕手を前提とした上で「試合に出るか出ないかに関わってくる。バッティングはある程度、自信があるので、いろいろ守れたら武器になると思うんです。バッティングを生かすためには、試合に出ないといけない。C組で、3軍で野手が居ない中、誰が守るかってなった時に僕が行けたら、僕の幅も広がりますし、経験するかしないかで全然違うと思うので」と語る。

 現に、第5クールまでに行われたシート打撃では10打数8安打と圧倒、持ち味を発揮している。2軍に昇格、さらに定着するためには、3軍で圧倒的な成績を残すことももちろん、そもそも出場機会を得なければならない。支配下選手が優先される世界では、3軍と言えども、捕手で試合に出続けるのは容易ではない。

 そんな石塚が参考にするのは、ユーティリティとして昨季1軍で居場所をつかんだ谷川原健太捕手の姿。目指すは1軍の正捕手だが、そこに至るまでの道のりで、ユーティリティ性を活かしてチャンスを得ることも考えている。初めての外野守備も、城所龍磨3軍外野守備走塁コーチから一定の評価を受けた。石塚は這い上がるために“何でもやる”という気概に満ちている。

 キャンプは終盤だが、石塚には悔しさが募っている。甲斐拓也捕手が野球日本代表「侍ジャパン」の合宿に合流するタイミングでの宮崎昇格を狙っていた。しかし、B組の捕手の枠は空かず、悔しさを胸に秘めて筑後で黙々と汗を流してきた。「外野の練習とかはこっちでしかできないですし、ここで今やるべきことをやるだけだなと思いました」。チャンスを手繰り寄せるために、できることは何でもやる。頭と身体を存分に使いながら、石塚は自らの生きる道を模索している。

(上杉あずさ / Azusa Uesugi)