左肩の痛みで投げられなかった1月 佐藤宏樹の回復を支えた“和田毅の理論”

ソフトバンク・佐藤宏樹【写真:上杉あずさ】
ソフトバンク・佐藤宏樹【写真:上杉あずさ】

筑後での春季キャンプで、プロ入り後初めて100球超の投球練習も行う

 ソフトバンクの育成3年目・佐藤宏樹投手が充実の時間を送っている。ルーキーイヤーは入団前に受けたトミー・ジョン手術からの復帰を目指し、1年間のリハビリ生活を送った。“実質1年目”だった昨季、プロで初めて1年間試合で投げる経験を積んだ。今季はここまで筑後でのC組でキャンプを過ごし、確かな手応えを感じている。

 第5クール初日の21日に佐藤宏はブルペンで105球を投げ込んだ。「プロ入ってからブルペンでこんなに投げたのは初めてです」。キャッチボールや投内連携を含めれば球数が100を超えることはあったが、ピッチングだけでここまで投げられたことに安堵した。

「実は1月、肩が痛くて投げられなくて……」。今年1月、和田毅投手の自主トレに初めて弟子入りした佐藤宏だが、「治して行ったんですけど、自主トレでまた痛くなって全然投げられなくて」と自主トレ中も立ち投げで20球を2回しか投げられなかったという。だが、2月に入ってからはそんな苦悩があったとは思わせない投げっぷりを見せている。

 患部の状態を鑑みて、キャンプ初日から飛ばすつもりではなかったが、首脳陣やスカウトに見守られるブルペンで少し力が入った。「第1クールでバチバチに肩が張っちゃいました」。第2クールまではあまり手応えもなかったが、徐々に状態が上がってきたことを実感している。「初日にピッチングして、そこから不安もありつつでしたが、前回80球、今回100球投げて、やっと不安も無くなってきました。投げられているということに関して、このキャンプを通じていい感じだと思います」と表情も明るい。

 昨季、初めてシーズンを通して試合で投げ続けた佐藤宏。「大学時代は春秋のリーグ戦で先発しても、中継ぎで連投しても、1週間空くのでペースが掴みやすかった。でも、プロは先発だったら間は空くけど、中継ぎはいつ投げるかわからない。去年はアクシデントで急遽登板するというのもありました。そういうのを経験できたのは良かったですね」とコンディショニングや準備の難しさを知った1年だった。

 また「自分の投げ方がどんどん変わる1年だった」とも語る。春先に投げていた感覚と夏頃の感覚は全然違っていた。疲労や気温で可動域も変化し、状態の善し悪しに波があった。「調子が悪い時はズルズル行ってしまって、修正ポイントが見つけられませんでした。良かった時はそのままいけるけど、悪い時に『何で悪いんだろう』って考えながら、炎上してしまった。でも、1年やってみて、悪い時はこうなんだと知れましたし、今に繋がっています」。昨年の経験を経て、自分のことを客観的に捉えられるようになった。

 そもそも自主トレで和田に師事したキッカケは、一昨年のリハビリだった。同時期にリハビリ組にいた和田に「ピッチングの原理」を教えて貰った佐藤宏。「すべてはお腹から」という“体幹を入れた”状態での動きを身に付けることの大切さを学び、興味を持った。これを意識し、投球も良くなった手応えから弟子入りを志願した。「いろんな人からアドバイスを聞くたびに、共通するのは和田さんが言っていたこと。お腹から。ここが全て。ここが抜けた瞬間終わり」と現在の考え方の軸となっている。

 自主トレ後も筑後でメニューを継続して取り組んできた。リハビリ担当の勝永将史氏やコンディショニング担当の坂口直哉氏にも“和田理論”を元に「肩へのアプローチ」を徹底的に教えてもらい、肩の痛みも癒えてきた。佐藤宏は「恩人ですね」と感謝する。昨季1年間の経験と自主トレでの学びや刺激を胸に、左腕は“2年目”の飛躍を誓う。

(上杉あずさ / Azusa Uesugi)