鷹フルオススメの育成出身右腕 オフの肉体改造とフォーム変更で得た手応え

ソフトバンク・尾形崇斗【写真:福谷佑介】
ソフトバンク・尾形崇斗【写真:福谷佑介】

6年目の尾形崇斗が投じるボールは威力十分「例年以上にすごくいい」

 ソフトバンクの宮崎春季キャンプでは厳しい競争が繰り広げられている。A組だけで43人の大所帯。野手22人、投手21人が、限られた開幕1軍の登録枠を目指して連日アピール合戦を展開している。そんなA組の選手たちが汗を流すアイビースタジアムの隣。第2球場でも虎視眈々とA組昇格、1軍入りを目指す選手たちが必死にアピールを続けている。

 そんな選手たちの中で目を引く、推したい選手がいる。2017年の育成ドラフト1巡目で入団し、2020年に支配下登録となった6年目の尾形崇斗投手だ。ブルペンで投じる真っ直ぐは低めでも威力十分。シート打撃でもボールの威力は光るものがあり、尾形本人も「しっかり投げるボールも指にかかっているなっていうふうに、例年以上にすごくいいバランスでできています」と手応えを感じている。

 尾形の投球フォームを見ていると、明らかな変化が見て取れる。昨季までは大きく上げた左足を一度下ろし、再び引き上げてから投げる“2段モーション”になっていた。それが今年は一度足を上げると、そのままスッと投球に移っていく。それでいて、低めに糸を引くような強い真っ直ぐが次々に投げ込まれていく。

 尾形は新たなフォームについてこう語る。

「やっぱり1年戦うことが僕には足りなかった。前半良くても後半が駄目とか、去年もそういうのが出た。今年変えたのは、ちょっと2段モーションだと1年間出力を出し続けるにはキツイなと思ったので、一連の動きでしっかり投げるっていうのを試して今やっています。今まではやっぱり自分の力だけで生み出してたものを、体の力と傾斜の力をなるべく多く使えるようなフォームを考えて、それがすごいいい感じに来ている」

 長いシーズンを戦う中で状態の浮き沈みが昨季まで激しかった。良い時があっても、体が疲れてくれば悪くなる。1年間、継続して高いパフォーマンスを維持するためにどうするべきか。その思考の中で辿り着いたのが、エネルギーの消費の大きい2段モーションから脱却し、消費の少ないモーションへの変更だった。

 オフの間に取り組んだ課題克服のトレーニングも成果を発揮している。「瞬発系の動きが弱いなと思ったので、ジャンプ系とか重い物を投げたりとかのトレーニングをして瞬発力をつけました。その結果、低めに伸びのあるボールが行くようになってきました」。瞬発系のトレーニングを多く取り入れたことが、確実にボールの威力になって表れているという。実際、シート打撃で対戦した打者からも「低めがすごく来ている」との感想をもらったという。

 B組スタートで迎えた春季キャンプ。「悔しい気持ちはすごくあります。でも、こうやって這い上がっていくのがやっぱ僕のやり方。育成のときもそういう気持ちでやってきたんで、これぐらいが僕の心に火がつくというか、やってやろうと思えます」。現状はまだB組ながら「絶対に1軍のバッターを抑えてやろうという気持ちでいます」と、いつ来るか分からないA組打者との対戦機会を虎視眈々と狙う。

「一番は日本一の輪の中に絶対にいたいのと、勝ちパターンの7回で絶対に投げるっていうのは決めています。自分が良かったら絶対いけると思ってる。そこまでしっかり持っていければいいかなと思います」。もともとが育成から這い上がってきた“雑草魂”の持ち主。現状にも沸々と闘志が湧き立っている。B組でも光る1人。1軍の競争に割って入ってくるダークホースとなるかもしれない。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)