新人王の姿に「戻そうと思っていない」 高橋礼の復活の鍵は「右ケツ」にあり

高橋礼が打撃投手として登板し140キロを計測
かつての自分に、戻ろうとしているのではない。進化し、再びたどり着いた「140」だ。ソフトバンクの高橋礼投手が宮崎春季キャンプ第1クール最終日の5日、フリー打撃に登板。35球を投げて安打性は2本で「ガンで出ていたと言っていました」と140キロを計測したことを明かした。
2019年には12勝を挙げて新人王に輝いた。アンダースローから繰り出す力強い直球が武器だったが、近年は140キロに届かなくなっていた。「内転筋を怪我したこともありますし、もともと使えていなかったところもあります」と原因を振り返る。昨季終盤も「頑張っても138、139キロとかでした」と140キロの壁は厚かった。再び球速を取り戻したきっかけはどこにあるのか。
1月の自主トレでは千賀滉大投手、石川柊太投手らと米国で過ごした。トレーニング施設「ドライブライン・ベースボール」で動作解析に時間を割く日々。自分の体の特性を踏まえ、どこをどうすれば、理想に近づいていくのか。感覚ではなく、根拠のある理論がほしかった。「渡辺俊介さんとか牧田さんとかを真似していただけで、想像でやっていた部分があった」。また一から、高橋礼だけのフォームを作り上げた。その成果が、この日の140キロだ。
意識しているのは「右ケツ」だという。腕の位置も、過去の地面スレスレのようなところではなく、少し高い位置からリリースしている。「今まではアンダースローという形にこだわったせいでいろんなところに負担がかかっていた」。こだわりすぎるのはやめて、出力を求める。言葉で言うのは簡単だが、自分の頭の中で“効率的なフォーム”を描けているから、この形にたどり着いた。
「右のケツをうまく使えないと、まずマウンドを降りるスピードが遅いので、左足にうまく力を伝えられない、伝えられたとしても、疲れてはいけない、疲れるはずがないところが疲れてきたりして。1年間戦えなかったりっていうところがあるんで、その右ケツが入った状態から投げ始めるとかそういう感じですかね」
やっと自分だけの形を見つけた。2019年の姿を追い求めることはない。「あの時に戻そうとかは全然思ってないんですけど、それぐらいの活躍はしたいなというふうに思いますね」。もう一度戦力として、優勝に貢献するために。自信を持って2023年の春季キャンプを送っている。
(竹村岳 / Gaku Takemura)