斉藤和巳コーチも高評価 高橋礼が「ドライブライン」で掴んだ復活へのポイント

ソフトバンク・高橋礼【写真:福谷佑介】
ソフトバンク・高橋礼【写真:福谷佑介】

なぜ米国自主トレを選んだのか…「より理解を深めるために」

 1日にスタートしたソフトバンクの宮崎春季キャンプで、斉藤和巳投手コーチの目を引いた男がいた。ブルペンでの投球練習。今季から1軍投手コーチに就任したかつての沢村賞右腕が熱視線を送ったのが、復活を目指す高橋礼投手だった。22人のうち17人が行ったブルペンでの投球練習を見届け「礼は良かった感じはした。いい感じでオフを過ごしたのかなっていう感じはしましたよ」と名前を挙げて評価した。

 高橋礼は昨季、キャリアワーストとなる4試合登板に終わった。2019年の新人王右腕は復活を目指し、オフは米シアトルにあるトレーニング施設「ドライブライン・ベースボール」で自主トレを行った。メッツへ移籍した千賀滉大投手、チームメートの石川柊太投手と一緒になり、最先端施設で充実の日々を過ごした。

 そもそも、高橋礼はなぜ「ドライブライン」での自主トレを選んだのか。そして、得たものとはどんなことだったのか? キャンプ初日を終えた高橋礼を直撃。単独取材でその中身を聞いた。

「シーズン中からドライブラインのセッションはオンラインで受けていたんです。でも遠隔だったのもあって、まだまだ内容の理解が浅かった。もっと理解を深めたくて、自分の欲しい情報がアメリカにあったので行くことにしました。オンラインでも同じ内容でやれるんですけど、モーションキャプチャーを使って数字を全部出すというのがないと、よりパーソナルな部分の技術練習ができない。ひとりひとり、形が違ったり、目的が変わってくるので、そこをより理解を深めるために行きました」

 昨シーズン中からオンラインでドライブラインのセッションを受けていたという。もともとオフに入れば、単身でシアトルを訪れる計画を練っていた。たまたま千賀と石川も当地で自主トレを行うことが分かり、現地では寝食を共にした合同トレという形になった。

「今まではちょっと自分の想像とか経験、感覚で投げていたので、あまり体の使い方とか、力が発揮しづらいとか、うまくボールに伝わらないっていうようなことあったんです。それがどうしてそうなっているのか、どうやったらそうならないのかとかっていうのを知りたかった。ドライブラインはデータの数が膨大で平均値っていうのがある。そこから自分が外れすぎていたりとか、足りていない部分がはっきりと分かった」

 1か月弱の自主トレでは“目からウロコ”の連続だった。ボールの球速や回転数、回転軸だけでなく、自身の出力など詳細なデータが全て数字として示されるという。データと向き合い、自身の何が課題なのかを突き詰めた。「(直すべきところが)めっちゃありました。自分が想像していた、経験とか感覚からこうした方がいいなっていうところが間違っていた」。ドライブラインでの助言をもとにフォームを修正した。

「セットポジションの入り方から変えました。去年とは全く違うと思います」という今年の投球フォーム。ブルペンでの姿も確かに昨年からの変化を感じさせた。「右のお尻が使えないと全部の動きが遅くなる、力が発揮できない。セットした段階でいかに右のお尻を使えるかという入り方に変えました。太ももの前とか、膝とかで押しちゃう癖みたいなのがあるので、強制的にお尻に入れるようにしています」。米国で掴んだ修正点だった。

 このキャンプでは、新たな投球フォームを体に染み込ませることが最大のテーマになる。「徐々に身についてきているけど、意識の中でしかまだできていない。無意識化はできていないから、もっとそこを無意識に自分の理想の形に近づけるようにしています」。このフォームが染み付き、完成した時、新たな高橋礼の姿が見られるはず。かつての新人王が輝きを取り戻せば、ホークスもV奪還に大きく近づくはずだ。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)