育成選手だからこその複雑な胸の内… 重田倫明が明かす苦悩「気持ちが出てこない」

東浜巨と自主トレを行っている重田倫明【写真:米多祐樹】
東浜巨と自主トレを行っている重田倫明【写真:米多祐樹】

筑後市内で東浜との自主トレを公開

 育成選手にとっては1年1年が勝負になる。誰もが想像できそうなことだが、常に気持ちを燃やして戦う育成選手の胸中は、そんな簡単な言葉では片付けられない。ソフトバンクの育成・重田倫明投手は福岡・筑後市で東浜巨投手と自主トレを行っている。5年目を迎えて「不思議と『やってやるぞ』という気持ちが出てこない」と複雑な胸の内を明かした。

 重田は昨年の春季キャンプでA組に抜擢された。2軍、3軍で監督経験があり、ファームで自身を見てきた藤本博史監督が指揮官となり、絶好のアピールのチャンスをもらった。結果的に支配下登録されることはなかったが、ウエスタン・リーグでも44試合に登板。着実なステップアップを経て2023年シーズンに備えていると思いきや、オフを過ごす重田の胸中は少し違った。

「年末年始も中身から疲れているのか、A組キャンプから始まって、シーズンを中継ぎで飛ばして……。僕は今年(2022年)終わったらもうダメなんだと思いながら去年もやっていた。それをやり切ったがゆえに、今年やるぞいう気持ちにはなかなかなれなくて。相当悔しかったんですけど、気持ちの切り替えも大変でした」

 4年目を戦う中で“絶対に支配下登録”という結果を出すと心に誓っていたが、それは叶わなかった。1年間、心身を燃やして戦い続けた反動は大きく「不思議とやってやるという気持ちが出てこない」という表現になったわけだ。“燃え尽きた”と思えるほどに、重田にとっての2022年は全てを捧げた1年だったのだ。

 当然、東浜と自主トレを過ごしている今の心境は熱い。球団は育成契約ではあるが、今年の契約を結んでくれた。「1月に戻ってきて練習するにつれて、やっぱりやらないと、と気持ちが昂ってきた。もうやるしかない、やってやろうという気持ちにはなってきました」。どんな目標も、支配下登録されないことにはスタート地点にも立たせてもらえない。覚悟を持って福岡に帰ってきたつもりだ。

 重田は千葉県出身。国士舘大から2018年育成3巡目でプロ入りし、甲斐野央投手らと同期入団にあたる。「支配下登録を意識するがゆえに、最高の目標がそこになってしまうのが毎年の傾向にあった。ずっと1軍で活躍する、何十試合も投げられる選手にならないと」と重田なりに目標を掲げる。育成選手が1軍の舞台に立つことはできないが、ユニホームを着る1人のプロ野球選手だ。そこには誰にも奪われない1人1人のストーリーがある。

(鷹フル編集部)