41歳・和田毅の自主トレに驚愕する日々 育成・佐藤宏樹が挑む勝負の3年目

自主トレで和田毅(左)とともに汗を流すソフトバンク・佐藤宏樹【写真:竹村岳】
自主トレで和田毅(左)とともに汗を流すソフトバンク・佐藤宏樹【写真:竹村岳】

「こういうことを続けるから何年間も活躍されているんだなと感じました」

 2023年は決意のシーズンになる。今季が大卒3年目となる育成選手の佐藤宏樹投手が、長崎市内で行われている和田毅投手の自主トレに初参加している。「20年以上、長い年数されている左投手。話を聞くのもいいですけど、それより練習の中でどういうルーティンで一日を回っているかとか、私生活はどうとか、実際に自分の目で見てみたいと思って参加しました」と、全てを吸収している。

 秋田県出身のサウスポー。大館鳳鳴高から慶大を経て、2020年の育成ドラフト1巡目でホークスに入団した。大学4年時に左肘を手術。さらにドラフトの直前にはトミー・ジョン手術を受け、プロ1年目だった2021年はシーズンのほとんどをリハビリ組で過ごした。

 地道な日々の中で、同じくリハビリ組に来た和田と対面した。「そのときにフォームとかピッチングのことを教えてもらって。1個聞いたら100個以上で返ってきたので、やっぱりこの人すごいなって思いました」。2022年は主に3軍で実戦登板を重ね、ウエスタン・リーグでも2試合に登板した。3年目となる2023年に向けて、さらに成長するために、大先輩にお世話になることを決めた。

 和田の自主トレといえば、ランニング、地道な体幹メニューと豊富な練習量で知られる。さらに練習が終われば、選手全員で飲食店に出向き、過酷な食トレまで待っている。和田との取り組みに佐藤宏も「キツいです。こういう地味なことを入念に何時間もやるから、これが一番大事で、こういうことを続けるから何年間も活躍されているんだなと感じました」。身に起こる全てが勉強。大ベテランが率先して引っ張ってくれており「みんなが切磋琢磨していて、だからこそ疲れていてもメニューをこなせているんだと思います」と必死についていく日々だ。

 育成選手は3年を終えれば一度、自動的に自由契約となる。もちろん、再契約を結ぶ選手もいるが、一つの節目が3年であることは間違いない。勝負のシーズンに佐藤宏も「自分は手術して入ってきて、2年目はシーズンで投げられた。今年は結果を残さないといけない。まずはしっかり2軍で結果を残して支配下登録されるように」と表情を引き締める。

自主トレで汗を流すソフトバンク・佐藤宏樹【写真:竹村岳】
自主トレで汗を流すソフトバンク・佐藤宏樹【写真:竹村岳】

 今オフ、チームは大型補強を行った。海外FA権を行使してメッツに移籍した千賀滉大投手、巨人に入団した松田宣浩選手らがチームを去り、近藤健介外野手やロベルト・オスナ投手らを獲得。人的補償で田中正義投手が日本ハムに移籍することになった。さまざまな動きを経て、現在の支配下登録選手は67人となっている。

 佐藤宏は「支配下にはなりたいですけど、なっても1軍で活躍して長い年数、野球をやるのが目標なので」とハッキリと言う。支配下登録されるには枠の問題はもちろん、その瞬間のチーム事情にも影響される。それでも「僕がふさわしいか、ふさわしくないかの2択。他の選手が支配下になったら、僕がそいつより下だったというだけ。自分は絶対になれると信じないと。とにかく評価されるくらい、目をそらせないくらい結果を残せばいいというだけなので」と強調した。

 サウスポーなら誰もが憧れるであろう和田毅という存在。佐藤宏も「入った時はそうでした」とした上で「僕の立場で言うのもあれなんですけど、今はライバルではないですけど、同じ左投手ということで、和田さんに勝ちたい、和田さんを超えたいと思って自主トレに参加しています」と心境を力強く語った。最高のお手本であり、最大の壁でもある。憧れた背中は、いつか超えていかないといけない。

(竹村岳 / Gaku Takemura)