5球団争奪戦も…なぜ近藤健介はソフトバンク入りを決めたのか? 大きかった1人の“師匠”の存在

入団会見に臨んだソフトバンク・近藤健介【写真:藤浦一都】
入団会見に臨んだソフトバンク・近藤健介【写真:藤浦一都】

交渉の席上でかけられた言葉「厳しい面もお話をいただいた」

 海外FA権を行使して日本ハムからソフトバンクへの入団を決め、14日に入団会見に臨んだ近藤健介外野手。5球団による争奪戦の末に、ソフトバンクへの入団を決断した理由の1つに挙げたのは“師匠”と慕う1人の打者の存在があった。

 会見の場で入団の決め手を問われた近藤はまず、こう語った。「僕自身、野球選手として今まで培ってきた技術、能力で勝負するのか、これからもっと成長したいという思いで勝負するのか、そこを悩んだときに、もっともっと厳しい環境において自分を成長させたいという思いが一番強かった」。より一層、成長したいと思う中で、大きな後押しとなったのが、長谷川勇也1軍打撃コーチだった。

 近藤にとって長谷川コーチは「ずっと師匠と呼ばせていただいていた」という特別な存在。1軍で89試合に出場した2014年から交流があり、打撃面で様々な助言を仰いできた。「長谷川さんは凄い打撃をされていて、ああいうふうになりたいと思いながらずっと見ていました。なかなか声をかけられず、ようやくかけられるようになって、いろんなことを教えてもらった」とこれまでも薫陶を受けてきた。

 そんな尊敬する長谷川コーチからの“口説き文句”が胸に響いた。FA権を行使し、各球団と交渉する中、ソフトバンクとの2度目の交渉には長谷川コーチも同席した。そこでは厳しい言葉もかけられたという。

「ホークスならではの厳しさだったり、重圧だったり、厳しい面もお話をいただいた。来年30歳になりますけど、そういう言葉をもらうことも少なくなってくる年。そういう存在がいるのは僕の中では大きいと思っています」。中堅になり、球界でも屈指の打者になった。なかなか厳しい言葉をかけてくれる存在が少なくなってくる中で、長谷川コーチの存在が背中を押した。

 近藤が“厳しい環境”として挙げたのが「1軍で戦える選手が多い」という選手層の厚さだという。同じ左翼手でも成長株である柳町達外野手や正木智也外野手らがおり、さらには中村晃外野手や周東佑京内野手といった面々も競争相手になる。近藤とはいえ、うかうかしていられない状況にあり「より競争の激しい場所で、もう一回野球選手としてイチからという思いもありました」とも語った。

「毎年優勝争いができるチームだとも思っているので。そういうところから最高のオファーをいただいた。優勝を目指してやるチーム、常に勝つことを宿命づけられているチームという重圧もあると思いますけど、そういう緊張感でやることも、より長く野球選手としてグラウンドに立てる大事な要素なのかなと思います」。師匠に導かれるように辿り着いた新天地・福岡。近藤健介が3年ぶりのV奪還への使者となる。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)