「僕がしっかり投げていたら…」大関友久の心に刻まれる“苦い記憶”と来季への決意

契約更改を行ったソフトバンク・大関友久【写真:代表撮影】
契約更改を行ったソフトバンク・大関友久【写真:代表撮影】

印象深い試合にCSでの2試合を挙げ「チームに迷惑をかけてしまった試合」

 6日に契約更改交渉を行い、今季から4倍超となる年俸4500万円(金額は推定)で来季の契約を結んだソフトバンクの大関友久投手。今季は精巣がんの摘出手術を受けて途中離脱しながらもシーズン終盤に復帰し、21試合に登板して7勝6敗の成績を残した。先発していた前半には2度の完封勝利もマーク。来季は先発ローテの柱の1人として期待されている。

 今季の1100万円から大幅アップとなった大関は、球団からの提示に「最初はビックリした」と驚きを隠せなかったが、アップ分の使い道を問われると「今のところ欲しいものも特にないですけど、野球に対して行動できる範囲が広がるのがすごく嬉しい」。向上心の塊でもある左腕らしい答えだった。

 6勝をマークしていた7月下旬に異変を感じた。左睾丸にしこりを感じたため、念のため、病院で検査を受けると精巣がんの疑いがあると診断された。すぐに摘出手術を受けることになり、戦線を離脱。今季中の復帰は難しいと見られていたものの、思った以上に回復は早く、シーズン終盤に中継ぎとして復帰。復帰戦となった9月25日のロッテ戦では本拠地が大きな拍手に包まれた。

 病気での療養期間中に感じることもあった。「動けないのはつらいなというところと、あとになって気づいたんですけど、自分が知らないところでストレスを感じていたのはありました。その分、これからどうしようかと自分を見つめ直した時間でもあったので、いい経験ができました。自分は本当は何をやりたいのか、これからどうしていきたいのか、より明確になった。迷わず進んでいこうという気持ちになれた」。復帰してからはより一層、自分のやるべきことにフォーカスするようになった。

 そんな大関が今季の印象深い試合として挙げたのは、オリックスとのクライマックス・シリーズの2試合。10月12日の第1戦で2番手として5回途中から登板し、2連続押し出し四球を与えるなど2失点。続く10月13日の第2戦でも3回途中から2番手で登板し、同点の5回に杉本に決勝の2ランを浴びて負け投手になった。苦い記憶がよみがえる2試合だ。

「その2試合が自分の中では心に残っています。悔しい試合、チームに迷惑をかけてしまった試合が残っています。いろんな面で印象に残る試合がたくさんあったんですけど、個人的には勝ちたいと思っている。あの2試合は僕がしっかり投げていたら、と思う試合」と振り返る大関。悔しさを糧に成長し、チームの柱になりたい。そんな思いが言葉ににじみ出る。

 来季の目標に「一番は日本一に。1年間ローテーションで回って日本一になることです。(個人としては)18勝くらいはしたいと思います」と掲げる。「全ての面で今のままだと達成できないと思うので。一回り、二回り違った姿を来年見せられるようにしたい」。千賀滉大投手がメジャー移籍のため不在となることが確実な来季。病を、悔しさを乗り越えた大関が新たなホークスのエースになる。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)