コーチも評価する「成長株」 高卒1年目育成左腕・加藤洸稀の転機と抱く劣等感

ソフトバンク・加藤洸稀【写真:上杉あずさ】
ソフトバンク・加藤洸稀【写真:上杉あずさ】

大阪桐蔭や智弁学園と対戦し感じた「同じ高校生なのになんでこんな違うんやろう」

 虎視眈々と爪を研いでいる。兵庫県の滝川二高から2021年の育成ドラフト6巡目で指名を受け、ソフトバンクに入団した加藤洸稀投手は、球速表示以上のストレートとスライダーのキレが魅力の、ポテンシャルに期待がかかるサウスポーだ。1年目の今季は3軍戦で26試合に登板し、74回1/3を投げた。2勝4敗2セーブで防御率は3.63。若田部健一3軍投手コーチに「今年の3軍の成長株」と評価された1人だ。

 ルーキーイヤーは体力面での課題を痛感した。「前半戦はいい感じで投げられたんですが、夏頃から明らかに体力がないのが分かって、頭ではこうしたいと思っていても身体が追いついてこなくなって……」と、7、8月は特に苦しんだ。その経験を経て、プロで初めて迎えるオフシーズンは体力強化を最優先に取り組む。

「いっぱい走って、ウエートもやって、ご飯を食べて、来年の春のキャンプからしっかりアピール出来るようにしたい。今年は1回も2軍で投げられなかったので、来年は絶対に2軍で投げて、どんどん経験を積んでいかないといけない」と決意を語る。高卒1年目ながら、ゆっくりする気はさらさらない。「1、2年目だからまだ時間があると思っていたら一瞬で終わる。ちょっとでも早く良いピッチャーになれるように」と、早期の2軍デビュー、支配下登録を目指す。

 加藤洸が成長を急ぐのには、周囲とのレベルの差を肌で感じてきたからだろう。野球を始めた頃からプロ野球への憧れは持っていたが、その思いは高校入学後に一度は打ち砕かれた。「すごいピッチャーばかりで、大阪桐蔭とか智弁学園とかと試合をした時に、エグい選手しかいなくて。これは絶対(プロには)なれないと思いました」と振り返る。

 同学年の左腕には大阪桐蔭から日本ハムに入団した松浦慶斗投手や智弁学園で甲子園準優勝投手になった西村王雅投手(現・東芝)らがいた。彼らを見て「同じ高校生なのになんでこんな違うんやろうな」と衝撃を受けた。高卒でのプロ入りは諦め、大学や社会人で野球を続けて、そこからプロを目指そうと気持ちを切り替えていた。

 転機になったのは、3年生になって組まれた、その松浦らがいる大阪桐蔭との練習試合だった。その時に大阪桐蔭の視察に訪れていたであろうスカウトに目を付けてもらったことから、一気にプロへの道が開けたという。「可能性があるなら挑戦したい」と、3年生になって進路を変更。可能性を信じ、プロ入りを目指して突き進んだ。

 念願叶ってプロの世界に飛び込んでも、周囲との差をまざまざと感じた。「(風間)球打とか(木村)大成とか、同い歳でも支配下の選手がいて、(育成の自分たちと)何が違うんだろうと思いながら2人とキャッチボールした時に、これが支配下と育成の差だと分かった。あの2人は1桁、2桁の背番号でカッコイイ。お客さんの前で、自分は3桁で恥ずかしいなと思った。早く2桁になりたい」。高校時代も、プロに入った後も感じてきたこの劣等感こそ原動力となっているのは間違いない。

 加藤洸が憧れるのはDeNAの今永昇太投手。力感なく投げてキレのある直球を投げ込む左腕に魅力を感じている。チームの大先輩にあたる和田毅投手のことも「140キロ台でも真っ直ぐでバーンと空振りとれる。40歳超えているのに真っ直ぐで空振りとれるってめっちゃカッコイイ」と語る。

「(木村)大成たちみたいに150キロ近い速球が投げられるわけではないけど、真っ直ぐで空振りやファールを取って、ボール球のスライダーやチェンジアップを振らせたりっていうのが僕のピッチング。どんな状況でも真っ直ぐが中心になるピッチャー」と加藤洸はこだわりを口にする。和田や今永のようにプロの世界で生きていくべく生命線を着実に磨いていく。

(上杉あずさ / Azusa Uesugi)