小久保2軍監督も目を付けた存在 元気印&体力“オバケ”な育成ルーキー捕手

ソフトバンク・加藤晴空(そら)【写真:上杉あずさ】
ソフトバンク・加藤晴空(そら)【写真:上杉あずさ】

育成ドラフト10巡目ルーキー加藤晴空は文武両道・東明館高で初のプロ野球選手

 鷹の激しい捕手陣の競争に割って入るため、必死に己を鍛え上げている。2021年の育成ドラフト10巡目でプロの世界に飛び込んだ高卒1年目の加藤晴空(そら)捕手。プロ1年目で厳しさと過酷さを感じているが、日々大きな声を張り上げて練習に励み、175センチと小柄な体からは力強いエネルギーを放っている。

 加藤晴は佐賀県鳥栖市の出身。ファーム本拠地のある福岡県筑後市とほど近い地元出身の選手だ。東明館高から2021年の育成ドラフト10巡目でソフトバンクに入団した高卒ルーキーで、文武両道の同校初のプロ野球選手に。3年夏には甲子園にも出場。初戦敗退となったが、「1番・捕手」でスタメン出場し、リリーフとしてマウンドにも上がった。精神的にも主将としてチームを引っ張った。

 その捕手らしい野太い声が初めてタマスタ筑後に響いたのは今年1月の新人合同自主トレ。支配下、育成合わせて19人もの新人が集まり、プロとしてのスタートを切ったが、その中で小久保裕紀2軍監督が「1番声が出ていた。覚えました」と目を付けたのが加藤晴だった。「小学校の頃から声だけは大きかったので、自分は元気よくやって当たり前というか、そういう立場だったので、意識せずやれています」。小中高と主将を務めてきた根っからのキャプテンシーを誇る。

 1年目の今季は3軍戦で66試合に出場。1つしかない捕手というポジションで、かつ先輩も多くいる中で、決して出場機会は多くなかった。それでも「毎日、野球だけをする生活が初めてだったので、身体的にキツいことも多かったです」とルーキーイヤーを振り返る。夏場には、肩の怪我で1か月ほどの離脱もあった。自慢の体力とタフさをもってしても、プロの世界では、物足りなかった。

「不甲斐ない成績で終わっちゃったんで、来年は試合に多く出させて貰えるように、2軍に呼んでもらえる選手になれるよう頑張りたいです」と加藤晴は言う。たしかに、打率1割台と思うような結果も残せなかった。「そもそも力が弱かった。秋のキャンプで数多くバットを振れているので、少しずつですけど打球も飛ぶようになってきました」とパワーアップが目下の課題。その中で、持ち味の粘り強さやチーム打撃も磨いていく。今季も限られた出場機会で多くの犠打を決めており、攻守において献身的なプレーでアピールしていく。

 現在、ホークスには支配下、育成合わせて9人の捕手がいる。さらにFAで嶺井博希捕手の加入が決まり、ドラフト6位で吉田賢吾捕手、育成ドラフト14巡目で盛島稜大捕手も指名された。「支配下の若手キャッチャーもいるので、頑張らないと上がれないのは分かっています。まずは育成のキャッチャーに負けないようにもっと練習しないといけない」。加藤晴にとって、さらに分厚い壁が立ちはだかることになる。

 その中で、グラウンド中に響きわたる声と元気、更には二塁送球が加藤晴のアピールポイントだ。秋季キャンプでほとんどの選手が体力を奪われる中で、余力を感じさせる「体力オバケ」とも評されるタフネスさも魅力だ。現在、正捕手の甲斐拓也捕手も育成からの叩き上げ。加藤晴もいつの日か、鷹の捕手争いに名乗りを上げて欲しい存在だ。

(上杉あずさ / Azusa Uesugi)