鷹ドラ6は「内川、中村晃に似たタイプ」 スカウトが明かした吉田賢吾の強みと課題

横浜市内のホテルでソフトバンクと仮契約を結んだ桐蔭横浜大・吉田賢吾【写真:宮脇広久】
横浜市内のホテルでソフトバンクと仮契約を結んだ桐蔭横浜大・吉田賢吾【写真:宮脇広久】

大学通算打率.393「4割を切ったのは不満」とスカウト

 ソフトバンクからドラフト6位指名された桐蔭横浜大・吉田賢吾捕手が16日、横浜市内のホテルで仮契約を結んだ。契約金4000万円、年俸800万円(金額は推定)。大学通算打率.393(211打数83安打)、14本塁打の打撃が最大の魅力だ。「(球団側から)打てるキャッチャーになってほしいと言っていただきました。将来的には、3割30本塁打100打点を打てるような捕手になることが目標です」と輝かしい未来像を掲げた。

 大学生活最後の神奈川大学野球秋季リーグでも、打率.366(41打数15安打)、3本塁打。リーグ最多の15打点を挙げてチームを優勝に導き、MVPを獲得した。それでも松本輝アマスカウトが「彼の力からすれば、(通算打率が)4割を切ったのは不満」と苦笑するほど、右打ちのスラッガーとして技術力が高い。ソフトバンクのスカウト陣が携帯用の弾道測定器で、今年の主だったドラフト候補生の打撃を計測したところ、吉田はミート率でトップ。スイングスピード、打球速度でもトップ級の数字を叩き出したそうだ。

 福山龍太郎アマスカウトチーフは「打撃が柔らかくて、変化球や緩急にも対応できる。ボールのとらえ方が上手。癖がなく、広角に打ち返せる。これほどの選手はなかなかいません。内川(聖一内野手=今季限りで引退)、中村(晃外野手)に似たタイプだと思います」と球界屈指の好打者2人になぞらえる。「試合に常時出られるようになれば、30本塁打はわからないけれど、3割はいけるのではないか」とも言う。

 一方、捕手としても二塁送球のタイムが平均1.9秒を切る強肩だが、本人は「守備面が課題であることは明確」と自覚。福山チーフも「守備ではスローイングなど、レベルアップを図ってもらいたいところがある」と明かす。

 ソフトバンクには、今季も6年連続6度目のゴールデン・グラブ賞に輝いた30歳の甲斐拓也捕手が正捕手として君臨。今季143試合中、甲斐が125試合に先発し、大卒3年目の海野隆司捕手が11試合、高卒4年目で吉田と同い年の渡邉陸捕手が7試合で続いた。FAでの補強の可能性も捨てきれず、ポジション争いは過酷。そうでなければ、もっと上の順位で吉田を指名していたかもしれない。今年のドラフト(育成を除く)で指名された捕手はわずか5人で、吉田以外の4人は高校生だった。

「まさか6巡目まで残っているとは予想していなかった」と福山チーフ。それでも「(甲斐)拓也は基本的に守備型。(FA宣言したDeNAの)嶺井も経験値が高い。しかし、若くて打てる打者は貴重です。いい勝負になると思うし、打撃を生かした形で(代打などで)スタートできるのではないか。将来、常勝球団をつくるためにも、(守備優先と言われる)キャッチャー、セカンド、ショートに打てる選手が不可欠」と指摘する。

 吉田自身も「お手本になる選手が目の前にいる。しっかり見て、しっかり聞いて勉強して、いずれ、そういう選手に隙があれば自分が奪う――。選手としてはそういう気持ちがなければいけないと思います。しっかり準備をして臨みたい」と臆するところはない。意気軒昂である。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)