野手4人に対してコーチが8人 若鷹たちの筑後キャンプに広がる異例の光景

宮崎で行われているソフトバンクの秋季キャンプ【写真:上杉あずさ】
宮崎で行われているソフトバンクの秋季キャンプ【写真:上杉あずさ】

小川4軍監督が語る現状「人数が少ないから可哀想なくらい」

 宮崎で行われている地獄の秋季キャンプでは、選手たちが個々のの課題克服をテーマに、連日朝から夕方まで泥だらけになりながら汗を流している。一方、ファーム施設「HAWKS ベースボールパーク筑後」では、育成選手を中心とする筑後キャンプが実施されている。宮崎に比べると選手が少なく、コーチと選手がほぼ“マンツーマン状態”で、みっちりと練習に励んでいる。

 来季から新設される4軍を率いる小川史4軍監督は、第1クールを終えて「野手は4、5人しかいなくてね。とにかくバットを振っている。みんなマメだらけでテーピング巻いてるよ。量はこなしているね。人数が少ないから可哀想なくらい」と笑う。さらに「で、コーチが多いじゃない? マンツーマン以上」と続け、若鷹たちの練習ぶりに充実感を漂わせる。

 筑後キャンプに野手で参加しているのは石塚綜一郎捕手、加藤晴空捕手、佐久間拓斗内野手、早真之介外野手、舟越秀虎外野手、中村宜聖外野手の6人。だが、舟越は新型コロナウイルスの陽性判定を受けて療養中、中村宜は第1クールで外野守備練習中に脳震盪を負い、復帰を目指しているところだ。実質、4人で練習を行っている。

 第2クール初日となった8日の午前中は4人で打撃練習を行った。とにかくバットを振り、ボールを打ち込んでも、時間はたっぷりある。コーチの方が人数が多く、選手の動きに目を光らせている。当然、順番待ちの時間もない。振って、振って、振りまくる。練習に打ち込むにはこれ以上ない環境とも言える。

 秋季キャンプは「数をこなす、量をこなす。体力アップをしながら、ボリュームもアップ。チームプレーが入ってきたりもしないし、個々のレベルアップの時間」だと小川4軍監督は言う。1日最低1000スイングをノルマにバットを振り込んで、徹底的に基礎を積み上げているところだ。

 今季は3軍を率いていた小川4軍監督は、シーズン中の苦戦を振り返る。例年よりはるかに多い100試合以上の実戦を戦った。1、2年目の育成選手が実戦機会を数多く得られるのは貴重だが、その一方で怪我人やコロナの影響で「ギリギリの人数だったし、試合をこなすのに必死だったかな」と難しさも感じていた。

 実戦機会が増える反面、基礎を叩き込む練習時間が減ってしまった側面もある。来季は4軍が新設される。「球団の方針として、試合を数やって成長させるというのがある。その分、あまり練習というのができなかった。そういう意味では4軍制になって人が増えて、来年はいろんなことができるだろうね。4軍は3軍ほど試合はないだろうから、バランスとって試合をやらせたかったら3軍に行かせるし、練習させたかったら4軍とか、やれると思う」と先を見据える。

 2010年の3軍発足時も、新設の3軍監督を任された小川監督は、当時と同じようなイメージを描く。「楽しかったよ。やること全部初めてのこと。前例のないことをやっていくわけだから」と、スタートを心待ちにしている。筑後での秋季キャンプは、今季の経験を元に、来季のイメージも描きながら、充実した時間が流れていた。

(上杉あずさ / Azusa Uesugi)