第2クールまで終えた秋季キャンプ「テーマは鍛える」 小久保2軍監督の一問一答全文

ソフトバンク・小久保裕紀2軍監督【写真:福谷佑介】
ソフトバンク・小久保裕紀2軍監督【写真:福谷佑介】

「迷わせるということが、一番、首脳陣はしてはいけないこと」

 ソフトバンクの小久保裕紀2軍監督が、宮崎秋季キャンプ第2クール最終日の10日、鷹フルの取材に応じ、ここまでのキャンプを振り返った。キャンプのテーマに「鍛える」を設定し、徹底的にB組の若鷹たちを鍛えている指揮官。笹川吉康外野手の成長に目を細めると共に、少人数でのキャンプだからこそのメリットや、新任の明石健志2軍打撃コーチについても語った。

 小久保2軍監督の一問一答全文は以下の通り。

――第2クールを終えて、ここまでどうですか。
「藤野がちょっと離脱したのが、かわいそうだったんですけど、それでも少ない人数でやれること、テーマを『鍛える』にしてるんで、少人数だからこそ全員に目が届くし、スタッフと首脳陣の方が人数が多いぐらいなんで、プロの選手の鍛える時間、時間の使い方、メニュー、そういうものを経験してもらえればな、という思いでやっています」

――サーキットとか基礎的なところから。
「ああいうのは普通、歴代の長くプロ野球でやってきた人たちは、自分で自主トレのときにそういうメニューを組んでやってきてるんで、今回は全体練習の時間を使って、彼らにそれを伝えて、このオフの目安になればいいかなっていう思いはありますよね。自分でやるときには、このぐらいしないといけないんだっていう目安になってくれればいいという思いでやっています」

――キャンプが終わればすぐ自主トレ。そこを踏まえて。
「そうです。だから、そこに気付けるかどうか。当然このオフの時間の使い方、春先までの時間で、やっぱりうまくなる選手はそこでうまくなってくるし、体が強くなってくるんでね。そういうオフの時間にしてもらいたい。その時に何をしていいか分からないのであれば、今みたいな自重を使ったサーキット(トレーニング)なら、怪我のリスクはほぼないので、そういうメニューを。秋山(幸二)選手がいた時代から、ずっと僕もやってきたやつを今もやってるという感じですね」

――疲労もあると思う。
「自分もやってきたので分かるんですけど、最初の3日目ぐらいまでがすごいきつくて、その後はだいぶ回復して、同じサーキット、同じメニューであっても時間を3分の1ぐらいは短縮できてくるんですよ。半分までとは言わないでも、今も実際にそうなってきてるんで、狙い通りですね、そこは」

――フェニックスからキャンプまで時間もなかった。それぞれのテーマは。
「個々のテーマはみんなに提出させているんで、それに沿って。一応、コーチ陣にはメニューを組んであげてほしいという話はもちろんしています。フェニックスから来ていたメンバーは、フェニックスに来る前には提出されていたんで。今回から来るヤツらには、こっちに来た2日目に全員出させて、一応それに沿った取り組みを中心にやってますけどね」

――笹川くんが結構バットを振れている。
「笹川はおっしゃる通り、本当に成長したなと思う。もちろん技術的にはいろいろあるんですけど、やっぱり野球に対する取り組み方が。気分のムラが少なくなってきたんで、やるべきことをきっちりやれる点では、この秋しんどい中で歯を食いしばってやるっていうのが彼の姿になりつつあるんで、すごい成長を感じますよね。あと技術的にはちょっと振りすぎ。今年の秋は『ボールを遠くに飛ばす』というテーマを自分で課題に挙げてきたんで、今はそれをやらせていますけど、春ぐらいからちょっと方向をチェンジしていこうと思ってます」

――打撃練習ではラスト5本全部ホームランで終わると。
「真っ直ぐだけやったら、打ち損じも少なくなってきた。ただ彼の場合はやっぱりミックスしたときに、あそこまで振ってしまうんで、どうしてもミートできない。もう少しミート力を上げる練習を今はしているんですけど、来年春からは振りすぎなのを抑える作業が大事かなと思いますね」

――いまやっていることをやり続ければ楽しみ。
「この秋は少人数の10人からスタートしましたけど、当然この秋の成長とか、練習に対する取り組みや内容を考慮して、春のB組キャンプのスタートラインに立てるかどうか判断すると言ってるんで。そういう点では食らいついてきてる感じはありますけどね」

――仲田選手もコーチが付きっきりで。
「アーリーは順番にやってるし、あいつだけじゃなくて、来てるメンバーは同じぐらいの時間を使っての強化はできている。これがもう少し人数が増えると運営は難しくなるけど、今ぐらいの人数だったら、本当に好きな練習を好きな時間使ってやれるっていうのが率直なところ。仲田の場合はどっちかっていうとオーバーワークに気をつけないといけないタイプなんで、そこは気をつけて見てます。もし壊れてしまったら、多分期間が長くなるタイプの選手なんで、壊れる前にこっちがしっかりストップをかけられる目を、首脳陣で持っておかないといけないよって話はしてるんで」

――キャンプで教える体制としては良い環境。
「そうね、チームプレー(の練習)ができないぐらい人数が少なくなると、ちょっともう彼らもそういう連携プレーを含めてできないので消化不良的なところはあるでしょうけど、ギリギリできているんで。ただ、来年の春、1軍に人数を持っていかれ、3、4軍も筑後に居残りになると思うんで、人数の調整ってのは当然する中で、さすがに10人は少なすぎますけどね。秋のキャンプで、個別でビッシリやる分にはいいですけど。やっぱり抱えても16人ぐらいまでかなと。その方が効率的な練習ができるかなと思いますね」

――2軍打撃コーチは村上コーチ、明石コーチと新しくなった。
「コーチがバラバラなことを言わないように注意してくださいっていう話をしてるんで。それは引き続きなんですけどね。選手が迷わないことが一番大切なことなんで。迷わせるのは一番、首脳陣がしてはいけないことなんで。思いついたことを話すっていうよりも、(技術面を)いじるときには首脳陣でしっかり情報を共有してから選手に伝えて、もし最初に伝えたんであれば、こういうことを伝えたっていうことを後で共有していくっていうことをしておかないと。明石コーチはこう言うけど、村上コーチはこう言うってなったら一番よくないので。同じことを伝えるのはいいと思うんですけど。それが一番選手を迷わせる要因になる。往々にして、この世界はそれが多いんで、それはさせないように、気をつけていますね、今」

――明石コーチは引退してすぐコーチ。難しさは。
「あるんじゃないですか、それは。僕には言わないけど、1か月前まで選手をしていたんで、戸惑わないはずがないでしょうから。ただ距離感が近いっていうのは、ある意味、選手の気持ち、プレーヤーとしての気持ち、こういうふうに言われたり、こういうことをされるとやっぱり気分悪かった、効率が悪かった、自分がせっかく動こうとしてることに対して水を差されたっていう経験も新鮮だと思うんで。逆にそれをしなければいいと思うし」

「かといって友達じゃないんで、その距離感は大切にしてくださいねという話はしています。最初からそんな全てうまくいくわけないんで。全部が全部うまくいくはずがないので、やってみて失敗であればそこから改良して、いい方向に持っていけばいいので、最初から全てうまくやらないといけないと思いすぎないように、という話は明石にも当然しました。最初から正解が見つかって、それだけで動ける世界ではないんでね。トライアンドエラーですから」

――第3クールに向けては鍛えることを継続。
「午前中の球技に入るまでのメニューは変わらずするし、クール休み前はもう1回あるんで、また今日の400m走を入れて。限界を突き破ったら怪我するんで、押し上げさせる時間を作ります。今日は多分、限界を最後本当に押し上げる最後の5秒くらいのランニングだったと思うんですよね。55秒から1分がめちゃくちゃきつかったと思うんです。そういうのを入れながらやります」

(取材・米多祐樹 / Yuki Yoneda)