なぜ鷹は誉高・イヒネの1位指名を公表? 王会長も惚れた規格外のスケール

ソフトバンク・王貞治会長【写真:藤浦一都】
ソフトバンク・王貞治会長【写真:藤浦一都】

「シンプルにスカウトの評価が一番高い選手であった」

 ソフトバンクは10日、今月20日に行われる「プロ野球ドラフト会議 supported by リポビタンD」で誉高(愛知)のイヒネ・イツア内野手を1位指名すると公表した。永井智浩編成育成本部長兼スカウト部部長がオンラインで会見し「7日にスカウト会議を開きまして、イヒネ・イツア選手の1位入札で行こうと決まりました」と明らかにした。

 ナイジェリア人の両親を持つイヒネは、身長184センチ、体重82キロの大型遊撃手。今夏の愛知大会では3回戦で敗れたものの、高校通算18本塁打で、その潜在能力はスカウトの間で高く評価されていた。高松商(香川)の浅野翔吾外野手や日本航空石川の内藤鵬内野手らが注目を集める中で、なぜソフトバンクはイヒネの1位指名を決めたのだろうか。

 永井本部長はまずキッパリとこう言い切った。「シンプルにスカウトの評価が一番高い選手であったというところ」。巨人が指名を公表した浅野や、その他にも1位候補がいる中でも目を引いたのが、このイヒア。「浅野くんであるとか、大学生、社会人の投手、野手みたいなところも候補には挙がりはしましたけど、ナンバーワンの評価を集めたイヒネくんとなった」と明かした。

 身体能力に優れ、底知れないポテンシャルを秘めるという期待の高校生。永井本部長は「スケールがすごく大きいので、今までにない遊撃手のタイプかなというふうに思っています。大型でもありますし、足も速いですし、打撃に関してはうちの柳田選手に似たような大きいスイングアークで、遠くに飛ばせる力もある。本当に今までにないショートストップになる、そういう素材の選手なのかなというふうに思います。フィジカルの部分、身体能力に関しては本当にウチでもそのトップクラスだと思ってます」と惚れ込んでいる。

 王貞治球団会長もスケールの大きさを感じたようで、永井本部長は「我々が持っているイメージと似た感想を仰ってくれました。会長は常々、現場で何回も見ているスカウトの意見を尊重してくださいますので、そのあたりは信頼していただいてっていうところはあると思います」という。世界のホームラン王も唸らせる潜在能力を秘めているようだ。

 ソフトバンクの遊撃手は現在、今宮健太内野手がレギュラーに君臨している。今季キャリアハイの打率.296をマークしたが、今年で31歳に。若手には川瀬晃内野手や川原田純平内野手、小林珠維内野手らがいるものの、今宮を脅かすところまでは来ていない。“ポスト今宮”問題は数年後に起こり得る懸念ではある。

 仮に入団に至った場合、じっくりと数年かけて育成していく方針だ。永井本部長も「今宮は今年素晴らしい成績残して、まだまだ衰えを感じさせないプレーをしてくれています。彼(イヒネ)を獲得できたとしても、ある程度の時間を要して育成していくのかなというふうに考えています。そのあたりはしっかり今宮選手の後のレギュラーになってくれれば、というふうに思ってます」とプランを描く。

 数年先の未来図を描いた上で、将来性を重視したイヒネの1位入札。果たして競合になるのか、昨年の風間球打に続く一本釣りとなるのか。ドラフト当日に注目が集まる。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)