「記憶にない」という人生初バースデー弾 柳田悠岐が“松田バット”を使う理由

3回に満塁弾を放ったソフトバンク・柳田悠岐【写真:荒川祐史】
3回に満塁弾を放ったソフトバンク・柳田悠岐【写真:荒川祐史】

2球続いたスライダーを捉えて満塁弾も「来た球に反応した」

■ソフトバンク 8ー2 西武(CSファースト・9日・PayPayドーム)

 ソフトバンクは9日、本拠地PayPayドームで行われた西武との「パーソル クライマックスシリーズ パ」ファーストステージ第2戦に8-2で勝利し、ファイナルステージ進出を決めた。2連勝でのファーストステージ突破に導いたのは、キャプテンで主砲の柳田悠岐外野手。34歳の誕生日を祝うバースデーグランドスラムで、チームに白星をもたらした。

 3回だった。先頭の柳町が四球を選ぶと、三森も四球、牧原大は死球と3つの四死球で満塁のチャンスを作った。ここで打席に入った柳田。初球のスライダーを大ファウルにすると、続いた2球目のスライダーを捉えた。「全く(狙ってなかった)。来た球に反応しました。まぐれです」。体勢を崩されながら弾き返した打球は右翼ホームランテラス席へ。先制の満塁本塁打になった。

 この日が34歳の誕生日だった柳田。スタンドには子どもら家族も観戦に訪れており、自ら祝砲を打ち上げた。自らの野球人生を振り返っても「記憶にない」というバースデーアーチに「思い出に残る誕生日になったと思います。帰ってケーキでも食べたいなと思います」と頬を緩めた。

 レギュラーシーズン最終戦となった2日のロッテ戦。逆転負けを喫し、V逸が決まると、柳田の目も潤んだ。キャプテンとして、中軸を打つ打者として責任も感じた。「僕がもっと打っておけば優勝していたかなと思います」。シーズンは打率.275、24本塁打79打点。体に痛みを抱えながら、懸命にプレーをしていたとはいえ、物足りない数字に忸怩たる思いを抱えていた。

 悔しさも抱えて臨んだこのファーストステージ。第1戦でも3ランを放ち、2試合で2本塁打7打点とチームを牽引した。レギュラーシーズンの最後の2試合でも本塁打を放っており、これで4試合連続本塁打だ。「シーズン終わった時はもちろんそう感じましたけど、今はイチからというか、そういう気持ちでいる。今はいいメンタルで野球ができてる気がします」。負けられない試合で、キャプテンの奮闘ぶりは目を見張るものがある。

“熱男魂”も胸に戦う。今季で退団する松田宣浩内野手を尊敬してやまない柳田。松田が登録抹消となって以降、譲り受けたバットを使い続ける。トップの形やバランスは自身のバットと同じだが、違いはグリップ部分の形にあるという。「形が全然違います。持つところだけ。それがちょっといい感じかなと思う」。思いを背負うだけでなく、現在の打撃の状態に合っているからと使い続け、この日の満塁弾も松田のバットで打った。「場所がいい」と松田が使っていたロッカーも継承している。

 ファーストステージを2連勝で飾り、最高の形でファイナルステージが行われる大阪に向かう。「ピッチャーがしっかり抑えてくれましたし、良かったです」。頼もしすぎるキャプテン・ギータが、ソフトバンクを日本シリーズ進出へ導く。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)