なぜ2回途中で投手交代? 藤本監督が断ち切りたかった不穏な空気「ヒットも嫌だった」

ソフトバンク・藤本博史監督【写真:福谷佑介】
ソフトバンク・藤本博史監督【写真:福谷佑介】

「2回の最後まで森で行ってもよかったけど…」

■ソフトバンク 5ー4 楽天(29日・楽天生命パーク)

 29日に楽天生命パークで行われた楽天戦に競り勝ち、リーグ優勝に王手をかけたソフトバンク。初回に4点を先制しながらも追いつかれる苦しい展開で、勝利を手繰り寄せたのは、7投手による決死の継投策だった。

 初回、怒涛の4連続タイムリーでいきなり4点を先制したソフトバンク。だが、先発の森唯斗投手が波に乗れなかった。その裏、いきなり小深田、渡邊佳に連打を浴びると、島内に適時打を許して1点を失った。2回には先頭の辰己に四球を与え、岡島に2ランを被弾。1点差に迫られた。

 ソフトバンクベンチはすぐさま動いた。炭谷を空振り三振に打ち取り、打者一巡したところで森から大関友久投手にスイッチ。この早い継投の意図を藤本監督「よかったら引っ張ろうと思ったけど、悪かったらすぐ代えるって最初から言っていた。2回の最後まで森で行ってもよかったけど、もうヒットも嫌だったから」と明かす。

 グラウンド上に漂っていた不穏な空気。ここで新たな走者を出すと、流れが完全に相手へ行ってしまうのでは……。それを避けるために森を諦め、大関投入に踏み切ったのだった。

藤本監督の執念「絶対に今日の試合を落としたくなかったんで」

 大関は狙い通りに小深田を遊ゴロに打ち取って、この回を切り抜けて流れを食い止めた。続く3回に島内に適時二塁打を浴びて同点に追いつかれたものの、精巣がんの手術からの復帰後、最長となる2回2/3を投げて2安打1失点と好リリーフで復帰後初の勝利投手にもなった。

 5回には大関が渡邊佳に中前安打を浴びて右の浅村を迎えたところで、今度は泉圭輔投手にスイッチ。さらに6回には、泉が先頭の鈴木大に右前安打を浴びたところで、今度は左の嘉弥真を送り込んだ。イニング途中でも構わず、次々に投手を注ぎ込んだ。7回からは松本、藤井、モイネロの勝利の方程式。7人のリレーで楽天打線にそれ以上の加点を許さなかった。

 指揮官は「本当は2イニングでやめる予定だったけど、よく投げてくれましたよね」と2番手で力投した大関を称賛。手術から復帰したばかりの大関に2回2/3を任せる思い切った策を繰り出し「絶対に今日の試合を落としたくなかったんでね。4点取ってね、もう1点取られた時点でもう(森を)代えようかなというぐらいの意識はあった」というほどの執念の采配だった。

 優勝へのマジックは「2」となり、30日の結果次第でリーグ優勝が決まる。「オリックスがどうのこうのじゃなく、2つ勝つっていうことで。明日勝って、西武戦に勝って決めたいですね」と藤本監督。泣いても笑ってもあと残り3試合。総力を結集して、頂点へと駆け上がる。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)