ベンチでの日々は「キツかった」 松田宣浩が抱えていた葛藤と2年前に示していた覚悟

会見に臨んだソフトバンク・松田宣浩【写真:藤浦一都】
会見に臨んだソフトバンク・松田宣浩【写真:藤浦一都】

「大好きな野球を自分から今回辞めるという決断には至らなかった」

 28日に本拠地PayPayドームで会見を開き、今季限りでの退団と他球団での現役続行の意向を表明したソフトバンクの松田宣浩内野手。ホークス一筋17年。リーグ優勝6回、日本一7回に貢献してきた39歳の大ベテランが、ホークスのユニホームを脱ぐ決断を下したことに、多くのファンが衝撃を受け、寂しさを感じたことだろう。

 松田によれば、9月7日に球団と会談の場を持ち、来季の戦力構想から外れていることを伝えられた。翌8日、藤本博史監督と話し合いの場を持ち、出場選手登録の抹消と、現役引退か退団しての現役続行かの決断のための時間を設けることを決めた。そこから約2週間。ファームでの練習を続けながら、進退を熟考した結果、導き出した結論はホークスを退団して現役を続ける道だった。

 松田は会見で決断に至った胸中をこう語った。「若い選手と暑い中、一生懸命野球して練習を頑張ってきました。その中で気付いたことが、やはり自分は野球がまだまだ大好きということ、まだまだ体が元気ということ、あとはやっぱり大好きな野球を自分から今回辞めるという決断には至らなかった」。まだ野球をやりたい。その一心で、愛着あるホークスのユニホームを脱ぐ決断をした。

 松田は17年間、ホークスを支えてきた功労者であることは間違いない。走攻守三拍子揃ったプレースタイルはもちろん、どんな時でも常に声を出して元気を出してプレーする姿に胸を打たれた人も多いはず。首脳陣もチームメートたちも全幅の信頼を寄せるリーダーであり、ムードメーカー。チームには不可欠な存在だった。

 とはいえ、プロ野球は盛者必衰の世界だ。1軍公式戦に出場できる支配下登録枠は「70」しかない。結果が出なくなり、戦力として見られなくなれば、立ち位置が危うくなるのは必然。今季の1軍出場は43試合止まり。打率.204、0本塁打と奮わず、来シーズン中に40歳になる松田の立場が厳しくなっていたのは明らかだった。

 当然、あと1年、40歳までホークスのユニホームを着て、現役生活の最後を迎えることが理想ではあったろう。ファンの多くがそれを望むのも当然だ。とはいえ、戦力構想外の選手のために貴重な枠を使うのかどうかは、フロントにとって悩ましいところ。それによって、誰か別の選手が枠から溢れ出ることになる。さらにいえば、後輩の誰かを押し退け、戦力として見られていない状況でチームに留まることが松田にとって幸せなのかどうか。そう考えると、球団の考えも理解できるのではないか。

 松田自身も覚悟を持っていた。2019年オフに、球団から受けた4年契約の打診を断り、2年契約を選択した。40歳まで現役を確約されるオファーを断った真意について当時のインタビューで「契約に甘んじてダラダラするのもね……。成績を残せなくなっても、なお長く居座ろうとは思わないです」と語っている。結果が出せなくなったら契約してもらえない。それは松田本人も分かっていた。

 この日も松田は今季を振り返り「正直な話、チームが勝つのが大事なんですけど、これまでずっとレギュラーとして出ていた立場としては、ベンチに座ってるのもキツかったというのも言える。でも、これって勝負の世界なので、当然のことなので」と言い切っていた。精神的支柱としてベンチで声を張り上げる日々にも葛藤はあった。様々な思いが交錯する中で、チームを去り、現役を続けることを選んだのだ。

 慣れ親しんだホークスで現役生活に幕を下ろすという選択肢もありながら、現役続行を望んだ松田宣浩。10月1日の2軍戦でホークスでの最終戦を迎える。この先、獲得に名乗りをあげる球団は現れるか。「もう人生そのものだと思っています」というホークスと福岡に別れを告げ、球界きっての“元気印”は新天地を模索する。

(鷹フル編集部)

KEYWORD