奥村&森の“ニコイチ先発”は11連戦中に再び? 鷹・藤本監督が繰り出した勝負手

ソフトバンク・奥村政稔(左)と森唯斗【写真:荒川祐史】
ソフトバンク・奥村政稔(左)と森唯斗【写真:荒川祐史】

11連戦で先発ローテが苦しくなる中で考え出された奥村と森のセット登板

■ソフトバンク 9ー0 西武(13日・PayPayドーム)

 ソフトバンクは13日、本拠地PayPayドームで西武に9-0で大勝し、3連勝を飾った。4回に中村晃の適時打で先制すると、5回、7回には周東が2打席連続で適時打を放って加点。8回に大量5点を奪って試合を決めた。先発の奥村は3回無失点。2番手の森も8年ぶりに3イニングを投げ、5投手による無失点リレーで西武打線を封じた。

 西武との首位攻防第2ラウンドで繰り出した藤本博史監督の勝負策がハマった。この日先発マウンドに送ったのはプロ入り2度目の先発となった奥村。プロ4年目の30歳が3回まで西武打線を1安打無失点に封じると、スパッと投手を代えた。2番手にはかつての守護神・森を投入。来季以降に向けた“先発転向プラン”も出てきた右腕をロングリリーフとして送り込んだ。

 森も西武打線をわずか1安打に封じ、3イニングを無失点ピッチング。後続へとバトンを繋いだ。3番手のレイが死球と安打を許して降板となったのは誤算だったものの、嘉弥真が見事に“火消し”に成功。8回、9回の2イニングは津森が走者を出しながらも抑えて、5投手による完封リレーを完成させた。

 チームの窮地を救う“ツープラトン先発”だった。奥村は8月29日のロッテ戦以来、プロ2度目の先発。この間は中継ぎで2試合に登板していた。森が3イニング以上投げるのは、ルーキーイヤーだった2014年以来、8年ぶりのこと。チームは11連戦の真っ只中。先発ローテが苦しくなる中で、その谷間を埋める方法として、藤本博史監督ら首脳陣が考え出したのが、この「奥村+森」のセット登板だった。

 指揮官は「もともと今日は3回しか行く予定はなかった」と、奥村が“3イニング限定”の先発、いわゆる“オープナー”としての役割だったと明かす。ほぼ相手打線を一回り。長いイニングを考えることなく、3イニングに全精力を注いで抑えてもらうことを狙った。2番手には先発転向に向けて、イニングを伸ばしている森に託し、3番手には中継ぎに配置転換したレイがスタンバイ。これで7回まで凌ぐプランを描いた。

 結果、先発の奥村は3回までほぼ危なげなく、1安打無失点と好投。指揮官も「本当にいいピッチングしてくれました」と称えていた。見ていたものからすれば、もう少し投げさせても良かったのでは、と思うほどの内容だったが、指揮官は「あのピッチングしてたらもっと投げろ、投げさせろって思っている人もいると思いますが、この先に分かることなんで。森も一緒です。この2人はセットでもう1回、近々あるんで。もう2人は3回以上投げさせないっていうのは最初から決めていた」と口にした。

 藤本監督が語る「この先」「近々」とは、この11連戦中の残る7試合のことだろう。先発の頭数が足りない、とされていたこの過酷な連戦。もともとローテの一角を担っていたレイがこの日から中継ぎに回ったことで、先発の頭数が1枚減ることになった。

 残り7試合で先発が見込まれるのは、2軍からの昇格がなければ、石川、和田、板東、千賀、東浜の5人。14日の西武戦で先発する石川が中5日で20日の日本ハム戦に回ることが可能であれば、あと1枚足りないことになる。もう1度、2人を短い登板間隔で“ツープラトン先発”として組み込めば、11連戦のローテは埋まることになる。

 11連戦をどう切り抜けるか。2軍からの昇格なども含め、さまざまな投手起用方法を検討した上で、首脳陣が最善と判断したのが、この策だったのだろう。共に自主トレに励んだ“チーム森”のメンバーでもある奥村と森。この2人が苦しい台所事情の救世主となってくれそうだ。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)