今宮健太が語る松田宣浩の存在 本人は2軍降格も、後輩たちが受け継ぐ“熱男魂”

ソフトバンク・松田宣浩(左)と今宮健太【写真:藤浦一都】
ソフトバンク・松田宣浩(左)と今宮健太【写真:藤浦一都】

「熱男さんはいないですけど、その気持ちを引き継いでやっていけたら」

 12日に本拠地PayPayドームで行われた西武戦に7-5で競り勝ったソフトバンク。ゲーム差なしで追う2位との首位攻防第1ラウンドで決勝打となる逆転の2点適時打を放ったのが、選手会長の今宮健太内野手だった。

 1点ビハインドで迎えた3回だ。四球で出塁した甲斐、周東を三塁、二塁に置き打席に立つと、スリーボールからの4球目、左腕エンスがストライクを取りにきたストレートを中前へと弾き返した。2人の走者が生還し逆転に成功。その後リードを広げて逃げ切り、これが決勝打となった。

 この一打のあと、球団広報から届く談話にはこう記されていた。「スリーボールのカウントでしたが思い切ってスイングを仕掛けにいきました。逆転の一打となって良かったです。熱男魂です!」。熱男。そう、9月8日に出場選手登録を抹消された松田宣浩内野手のことだ。

 39歳の大ベテランは今季43試合の出場で打率.204と不振に喘いだ。それでも、ベンチでの存在感は別格で、常に声を出すチームリーダー、ムードメーカーとして不可欠な存在、後輩たちからの信頼も厚かった。ただ、打撃の状態に加え、守備位置などチーム編成の都合もあって、2軍降格となった。

 松田が1軍のベンチからいなくなって4試合。今宮は「やっぱりベンチにいるといないとで、雰囲気はガラッと変わりました」と感じ取る。ただ、いつまでも大ベテランに頼ってはいられないにも事実。ファーム降格が決まった直後、松田からチームメートたちにゲキが飛んだ。

 松田の思いを引き継ぐように、中堅、若手が一緒になって雰囲気を作り出している。選手会長としてチームを引っ張る今宮は「なんとかベンチがしょぼんとならないように、若い選手、海野を筆頭に、すごい元気を出してもらってますし、そういった雰囲気ってすごい大事になってくる。これからが特に大事になってくるところだと思うんで、熱男さんはいないですけど、その気持ちを引き継いでやっていけたらなと思います」と、チーム全員の思いを代弁する。

 何より今宮や柳田といった現在の中心選手たちは松田の全盛期を間近で見てきた世代だ。こういう状況で後輩たちから名前が挙がることにも絶大な敬意が滲む。「本当に松田さんを見て、育ったところもありますし、これから僕らもそういった姿で引っ張っていかないといけない立場になってきてるのは間違いないと思う。リスペクトしてる大先輩なんで、いい報告ができるようにと思います」と今宮も言う。

 ソフトバンクは目下、地獄の11連戦の真っ最中だ。3チームがひしめく熾烈な争い。過去、何度も優勝を経験している今宮ですら「ガチガチです。それぐらいもうめちゃめちゃ緊張してますし、昨年の悔しい思いっていうのもあって」と例年にない緊張感を感じているという。そんな中での連戦に「しんどいと思ったら負けですもんね」と覚悟を固める。

 今季も残り17試合。5位のロッテまで優勝の可能性を残す近年稀に見る大混戦のパ・リーグ。最後の最後まで行方の見えない戦いを、ソフトバンクナインは大先輩の魂と共に戦っていく。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)