「ギータ2世」が見せる成長の軌跡 小久保2軍監督も認める笹川吉康の進化

ソフトバンク・笹川吉康【写真:藤浦一都】
ソフトバンク・笹川吉康【写真:藤浦一都】

課題とされていた逆方向への打球で本塁打が出始めている笹川

 ソフトバンクの笹川吉康外野手が着実に進化する姿を見せてくれている。9月1日に行われたウエスタン・リーグの阪神戦ではバックスクリーン左へ叩き込む特大の4号本塁打。小久保裕紀2軍監督からも「良いホームランでしたね」と認められた会心の一発だった。

 この本塁打には「ギータ2世」とも称される笹川の、今季の取り組みの成果が現れていた。元々フルスイングが持ち味だが、強い打球が飛ぶのは主に引っ張りの右翼方向だった。課題とされたのは逆方向への打球。今季はセンターからレフト方向へ強い打球、スタンドインさせる打球を打つことを意識し、練習に取り組んできた。

「将来、ホームランバッターなるには(このままでは)キツイな、と。広角に打てるようにしないと」と笹川自身も課題を自覚していた。アウトコースのボールに対しては、体が前に突っ込み、力のないゴロになることが多かった。その“弱点”を見抜いていた小久保2軍監督も「外のボールを手だけで打っている。マシン打撃では左中間に打たせている。引っ張らせない」と、徹底して逆方向を意識させてきた。

 その笹川が今季最初に手応えを感じたのは、6月22日に由宇で行われたウエスタン・リーグの広島戦。3月20日に放った公式戦初アーチ以来となる2号本塁打だった。左中間へ放った一発は、笹川にとって人生初の“逆方向ホームラン”。「逆方向が課題だったんですけど、初めて逆方向にホームランが打てて、練習の成果が出たんだなと思いました」と話していた。

 徐々に成果が現れてきた。試合前練習で打撃投手を務め、バッティングの状態をチェックする小久保2軍監督も「外の球に対してやっと下から連動して(バットが)出てくるようになった。センターから逆方向にっていうのが彼の中の課題で、それが形として少しずつ現れている」と成長を認める。

 笹川自身も「インコースの球は今まで右翼にガンガン打つイメージだったんですけど、インコースも極端にセンターを意識しだしたら、アウトコースにも手が出るようになりました」と語る。これまでは空振りするケースが多かった“真っすぐ待ちで来た変化球”に対しても対応できるようになってきたという。

 笹川が憧れる選手といえば柳田。1日の阪神戦には新型コロナウイルスの陽性判定から復帰した柳田も出場していた。憧れの大先輩の前で一発を放ち「最後(ベンチで)柳田さんが待っててくれて嬉しかった」と笑う。「完璧にとらえてホームランにするのは当たり前。いかに打ち損じてもホームランにできるか」と柳田の背中を追いかける笹川。スラッガーとしての歩みを、一歩ずつ進めている。

(上杉あずさ / Azusa Uesugi)