送り込まれた松本も驚いた なぜ鷹ベンチは満塁で左の栗山に嘉弥真をぶつけなかった?

ソフトバンク・藤本博史監督【写真:藤浦一都】
ソフトバンク・藤本博史監督【写真:藤浦一都】

■ソフトバンク 4ー0 西武(日本時間2日・PayPayドーム)

 ソフトバンクは2日、本拠地PayPayドームで行われた西武に4-0で勝利し、首位に返り咲いた。5回に今宮健太内野手のソロで先制すると、6回にはアルフレド・デスパイネ外野手の適時打で追加点。先発の東浜巨投手が6回途中まで無失点と好投すると、アクシデントでの降板後もリリーフ陣がリードを守り抜き、首位攻防戦第1ラウンドを制した。

 序盤は東浜と松本の息詰まる投手戦だった。4回まで両チーム無得点。5回にソフトバンクが今宮のソロで均衡を破ると、直後の6回に試合の行方を左右するポイントが訪れた。東浜は2死から森に中前安打を浴び、山川は四球で歩かせた。暴投で森が二塁へ進んで一塁が空き、フルカウントとなったところでバッテリーは37本塁打を放つ獅子の主砲との勝負を避ける選択をとった。

 続く呉が3ボール2ストライクとなっての6球目を打ち返した打球はボテボテの当たりとなり、東浜の左に力無く転がった。処理に走った右腕だが、捕球することができずに内野安打となり、この打球を追った際に東浜は右足首を負傷。ベンチで治療し、一度はマウンドに戻ったものの、続投できず、マウンドを降りることになった。

 6回2死満塁の大ピンチで、打席に迎えるのは左打者の栗山。多くのファンは“左キラー”で今季抜群の安定感を誇る嘉弥真新也投手の投入を思い浮かべたはず。ただ、ソフトバンクのベンチが送り込んだのは、意外にも右の松本裕樹投手。マウンドに上がった松本ですら「嘉弥真さんだろうなと思っていた」と驚く継投策だった。

「栗山には松本のパワーピッチングで行った方が相性もいいしと」

 緊急登板となった松本だったが、圧巻の投球を見せる。150キロを超えるストレートを連発して栗山を追い込むと、最後はフォークで空振り三振に。満塁のピンチを切り抜け、見事に火消しに成功した。この回を松本が凌ぐと、7回は津森宥紀投手、嘉弥真新也投手、泉圭輔投手の3人を突っ込み、藤井、モイネロと繋いだ。

 東浜のアクシデントでのスクランブル継投。なぜ、藤本博史監督は“火消しの嘉弥真”ではなく、松本の投入したのか。指揮官は試合後に「去年5打数0安打。嘉弥真は今年2打数1安打。次の回、左が続くっていうところもある。そこに嘉弥真を当てた方がいいんじゃないかって。だから栗山には、松本のパワーピッチングで行った方が相性もいいしっていうことで、あえて松本を選びました」と、狙いを明かした。

 松本と栗山はここまで今季の対戦はなし。昨季は7打席対戦して5打数0安打2四球だった。一方で、嘉弥真は栗山と今季2打数1安打。さらに西武打線は栗山の後、右の愛斗を挟んで、オグレディ、鈴木と左打者が続いていた。ベンチは松本と嘉弥真の栗山との相性、そして左打者が続く下位打線の並びを考慮し、栗山に嘉弥真ではなく松本をぶつけたのだった。

 ベンチの思惑通りに松本が栗山を空振り三振に仕留めると、その裏に大きな追加点が生まれた。嘉弥真らを投入した7回の西武の攻撃を封じると、その裏にはさらに2点を加えて大きく勝利を手繰り寄せた。大きな勝負のポイントとなった6回の守り。驚きの継投を繰り出したベンチ、そして、その期待に応えた松本と、ソフトバンクにとって大きな勝因となった。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)