2軍で好投を続け、小久保2軍監督からも絶賛されていた尾形
20日に1軍昇格を果たしたソフトバンクの尾形崇斗投手。早速、本拠地・PayPayドームで行われた日本ハム戦の9回にマウンドに上がると、走者を出したものの、1イニングを無失点に抑えて試合を締めくくった。
2軍では状態の良さをアピールしていた。19日に行われたウエスタン・リーグのオリックス戦では4番手で登板し、1回を無安打無失点。2つの三振を奪うなど力強い投球を披露し、小久保裕紀2軍監督からも「今日はめちゃくちゃ良かった」と絶賛された。同日に中村晃内野手、三森大貴内野手、椎野新投手らが新たに新型コロナ陽性判定を受け、この椎野の代役として白羽の矢が立ったのが尾形だった。
昇格アピールの場となったオリックス戦の最速は148キロだったが、球速以上の伸びがあった。尾形の今季最速は153キロ。150キロを超える球も多くあったが、この日の真っ直ぐに手応えがあったようで「今年いい感じで自分のイメージしたピッチングが出来ている。今日は、自分の空振りの取れるまっすぐっていうのが出たので、とても良かったです」と手応えを口にしていた。
女房役を務めていた九鬼隆平捕手も驚きを隠せなかった。「今日の尾形、完璧です。あれは打てない」と舌を巻いた。九鬼曰く「アイツの真っ直ぐは特殊。綺麗に伸びてくる真っ直ぐです。ベース板の上が強いんですよ。普通でもエグいけど今日は完璧」と絶賛しており、コーチ陣からも低めの伸びをいつも以上に評価されていたと言う。
好調の要因は「軸を縦に使う」意識にあるという。「育成から支配下になるくらいの時、身体を縦に振っていたんです。それを思い出してやってみると、良くなっていきました」と尾形は明かす。試行錯誤を繰り返し、引き出しも増える中で“育成魂”で這い上がってきた頃の取り組みが、更なる浮上へのヒントになったという。
好投を続けていた7月末に新型コロナの陽性判定を受け、離脱を余儀なくされた。悔しさもあったはずが、その時間も前向きに捉えた。「いい時間になったし、もう1回、今後の計画を立てる期間になりました。また新しいピッチングが出来て良かったです。ここからクライマックス、日本シリーズまで1軍で投げたいという気持ちです。張り詰めていた気持ちも一度リセットして、もう1回やって行こうと思いました」。気持ちを入れ直して、再起していたところで1軍から声が掛かった。
小久保2軍監督が絶賛していたことを伝え聞いた尾形は「なかなか褒められることがないので嬉しいです。今年、藤本監督からなかなか名前を挙げてもらえなくて悔しかったので、良かったです」と表情を緩めた。7月19日に登録抹消となって以来、約1か月ぶりの1軍。チームの緊急事態で巡ってきたチャンスを、掴んでもう離さない。
(上杉あずさ / Azusa Uesugi)