最下位指名から掴んだ支配下への道 鷹・中村亮太が明かしていた藤井皓哉の存在

支配下契約会見に臨んだソフトバンク・中村亮太【写真:球団提供】
支配下契約会見に臨んだソフトバンク・中村亮太【写真:球団提供】

2日に支配下契約締結が発表されたソフトバンクの中村亮太

 ソフトバンクは2日、育成選手だった中村亮太投手と支配下選手契約を結んだと発表した。同日の西武戦前に会見が行われた。2020年の育成ドラフト8巡目で東農大北海道オホーツクから入団した最速154キロ右腕。今季はここまでウエスタン・リーグで27試合に登板し、防御率2.45。イニング数を超える奪三振をマークし、支配下昇格へアピールを続けてきた。

 1軍で新型コロナウイルス陽性者が続出。リリーフ陣が手薄になったことを受け、中村亮に白羽の矢が立った。育成2年目の今季は春季キャンプ途中からA組に抜擢され、オープン戦でも3試合にも登板。ただ、開幕前に支配下登録されたのは藤井皓哉投手で、中村亮の支配下登録は叶わなかった。

 その悔しさを糧にしてファームで存在感を示してきた。一時は14試合連続無失点と安定感ある投球を続けた。小久保裕紀2軍監督からも「一番安心して見ていられる」と高く評価されるなど、度々「中村亮」の名前が挙がっており、期待の高さを窺い知ることができた。

思い出した一球入魂の精神「2軍で成績残そうというその考え自体がダメだなと」

 一度は逃した支配下登録のチャンス。それでも中村亮は地道にファームで結果を出し続けてきた。「最初は投げる度に防御率を見返していて、気になっていました。防御率を下げないと(支配下には)上がれないと意識してしまって……。でも、2軍で成績残そうというその考え自体がダメだなと。常に1球1球全力で投げて、打たれても悔いの残らないピッチングを続けていくようにしたら、いい感じで抑えられるようになりました」。一球入魂の精神を思い出したことが、ファームで好投を続ける源になった。

 育成選手という常にアピールしなければならない立場である以上、どうしても数字は気になるもの。ただ、我に返った中村亮の考えは違う。「最初からすごい選手で入ったわけじゃない。育成最下位から入ったので。自分に失うものはないんで。出せる力を出せばいいと思ってやってきました」。2020年の育成ドラフト8巡目。ソフトバンクでは最後の指名だった。胸に秘めた反骨心。這い上がると誓った初心を思い出して腕を振り続けた。

 春先の悔しさを力に変えた。春季キャンプ途中から共にA組に昇格していた藤井が開幕前に支配下登録を勝ち取り、中村亮はファームで再スタートとなった。やはり悔しさが込み上げた。藤井は1軍で好投を続けて信頼を勝ち取り、今では勝ちパターンに組み込まれるチームに不可欠な投手になった。4か月前はライバルだったはずが、一気に遠い存在になってしまった。

藤井の活躍が刺激に「落ちてなかったら今ほどガムシャラになれてないかもしれない」

 ただ、この藤井の活躍が中村亮を成長させた。「常にいい刺激になっています。逆の立場で自分が開幕時に支配下になっていても、藤井さんみたいにあれだけの結果出せていないと思うし、逆に(ファームに)落とされて気付けたことがたくさんあります。落ちてなかったら今ほどガムシャラになれてないかもしれないし、取り組みも考え方も違っていたと思います」。中村亮が成長を遂げる上でも悔しさは欠かせないものだった。

 開幕から3か月が経ち、チームの緊急事態下で目指してきた舞台に辿り着いた。早速1軍の出場選手に登録される見込みだ。「やっとプロ野球選手になれました。まだ自分のプロ野球生活は始まってなかったので」と、支配下昇格の知らせを聞いた時、中村亮はこう溢していた。見据える目標は大きく、抱く志は高い。

「最終的には千賀さんみたいに先発にも興味があります。自分はタイプ的には抑えの方が気持ち的に上がるものはあるんですけど、徐々にイニング増やしていつかは先発をやってみたい気持ちもあります」。中村亮のポテンシャルを見抜き、自主トレに誘ってくれたのが千賀滉大投手だ。エースの背中を追いかける中村亮が“プロ野球選手”としての一歩を踏み出す。

(上杉あずさ / Azusa Uesugi)