千賀滉大の中にいる「2人の自分」 無傷3勝、防御率0.62の好投支える“成長”

「自分のやりたいことと、チームが求めていることのバランスを自分で把握してきた」

 千賀が球界最高の投手の1人であることに異論を挟む人はいないだろう。160キロを超えるストレートとお化けフォークを武器とし、カットボールやスラーブを操る。今季はシンカー(スプリーム)も球種に加え、変化球も多彩だ。ただ、時に、メカニックの部分などでベクトルが自己に向くことで、失点がかさむこともあった。

 ただ、そういった姿は今季は感じられない。明らかに求める姿と違っても、試合を作ってチームに白星をもたらしてくる。千賀が投げた試合は今季4戦4勝だ。これまで幾多の経験を積み、エースとしての自覚も芽生える。「自分のやりたいことと、チームが求めていることのバランスを自分で把握してきたな、と」。求めるものは追い求めつつも、チームが求める役割は果たす。その“バランス感覚”が成長の証となっている。

 常に上を目指し、自身の理想を追い求める探究心は失わない。その中でも役割を果たすための準備も怠らない。「やるべきことに対してのアプローチの時間を1週間とりながら、それとは別に試合の中でどうしていくかという話にもなってくる」と言う。千賀滉大の中にある「2人の自分」。今季の好投を支えているポイントになっている。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)