渡邉陸が過ごす“師匠がいない冬” 探し続けるもの…ライバルは「気にならない」

自主トレ行う渡邉陸【写真:飯田航平】
自主トレ行う渡邉陸【写真:飯田航平】

豊富な練習量をこなす自主トレ

 日が暮れてもバットを振り続ける男たち。印象的なその姿に、期待せずにはいられない。渡邉陸捕手は、井上朋也内野手、西武の仲田慶介内野手、DeNAの井上絢登内野手らと福岡市内で自主トレを行っている。「終わり」という概念がそこには存在しないかのような没頭ぶりだ。

 グラウンドには乾いた打球音が響き渡る。いつまでも続く練習。「納得する瞬間はあるのか?」と問うと、渡邉は少し遠くを見つめてこう言った。「いいものに出会いたいんです」――。

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渡邉陸が追い求める、感覚的な「いいもの」とは?
2年前の「鎖骨骨折」が教えた、今の最適な体づくり。
ライバルを意識しない、渡邉が打撃で示す「具体的な目標」。

「納得というか……。いいものに出会いたいんです。感覚的なところもそうです。なので、それをずっと探しながら打っているというか。だから練習が長くなっちゃうんですよね。シーズンが始まってからもそうですけど、ずっとそういう気持ちでやっています」

 午前9時からスタートした練習は、スプリントトレーニングを終えると、守備練習とフリー打撃をみっちりとこなした。午後になっても熱を帯びたままだ。4人で組んだ打撃練習では、10球打って交代するローテーションを2か所で回す。自らの打順が終わればすぐにティー打撃へ向かい、息を整える間もなくバットを振る。 午後1時から3時半まで、実に2時間半打ち続けた。

味わった悔しさが糧に「あの時はもう」

 午後4時にグラウンドでの練習を終えても、背番号00の足は止まらない。そのままみずほPayPayドームへ移動し、さらに1時間半のウエートトレーニング。「ガチガチにウエートをやってしまうと怪我するリスクもかなり上がる。そこは1回経験して分かったことなので」 。今の自分に最適な負荷を探りながらこなす。過去の苦い失敗を糧にしているからだった。

 2年前、師匠である中村晃外野手との自主トレで「バケモノになる」と宣言し、体を巨大化させた。しかし、待っていたのは春季キャンプ初日の鎖骨骨折という試練だった。 「あの時はもう『体重を増やして』って感じだったので。今は、脂肪をなるべくつけずに、筋量だけを増やすことをやっています」。

 今オフ、その中村晃は腰の手術明けでリハビリ組にいる。 例年とは違った自主トレだが、不安はない。「晃さんの自主トレも結構、自主性を重んじるので。今も充実していますよ」。過去に学んだことは今も生かされ、“練習の虫たち″との時間は濃密なものになっている。

見据える自身の技術向上

 周囲の雑音も、今の渡邉には届かない。小久保裕紀監督が正捕手争いについて「海野(隆司捕手)もレギュラーではない」と発言し、横一線の競争を示唆した。だが今は自分の練習だけに集中する。

「(記事を)見ました。でも意識せずに、今年も頑張ろうと思いました。(ライバルの動向も)気にならないですね。もう自分のやるべきことは決まっている。それをやるだけです」

「1年間1軍にいるのは大前提として、スタメンで50試合、60試合は出たい。打つ方で今年はアピールしたいと思います」 。語った言葉には、力がこもっていた。日が落ち始めたグラウンド。まだ見ぬ“いいもの″に出会うためにバットを振り、心身を鍛えあげる。その背中は、自らの足で道を切り拓こうとする決意を物語っていた。

(飯田航平 / Kohei Iida)