初タイトルも柳町達が求める“怖さ” オフで早くも4キロ増…明かした本音「結局は…」

映画の舞台挨拶に登場した柳町達【写真:福谷佑介】
映画の舞台挨拶に登場した柳町達【写真:福谷佑介】

オフのテーマはパワーアップ「一番取り組みたいところ」

 5年ぶりの日本一に、自身初のタイトル獲得――。飛躍を遂げた1年も終わりを迎え、その視線は2026年に向いていた。12月26日、都内の映画館で行われた長編ドキュメンタリー「映画HAWKS SP!RIT-273日の記憶-」の舞台挨拶に登壇した柳町達外野手。ブラウンのスーツをまとった肉体は、この冬でひと回り逞しくなっていた。

 柳町といえば、スマートな佇まいから広角に打球を打ち分けるアベレージヒッター。今季は自身初の規定打席に到達し、打率.292、出塁率.384をマーク。初めてのタイトルとなる最高出塁率を獲得した。オフの契約更改では6800万円増の1億1000万円(金額は推定)で来季の契約を結び、「1億円プレーヤー」の仲間入りを果たした。

 まさに充実の1年となったが、シーズン終了を機に、28歳の目線は7年目を迎える来季に向かっていた。

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最高出塁率の男が求める「怖さ」。掲げる理想の打者像
指揮官からの「一塁指令」。ミットの型の参考にした名手
柳町パパのクリスマス。愛息に贈った意外なプレゼント

「今はもう、メインはジムに行くことですね。そこがこのオフで一番取り組みたいところかなと思います」

 自分自身に課すオフのテーマは“パワーアップ”だ。「まずは土台となる筋量アップやジャンプトレーニングだったり……。素早く動かすっていう能力を高めて、スイング自体も速くできたらなと思います」。

 食生活にもこれまで以上に意識を向けている。「タンパク質であったり、糖質だったりが不足しないように食べています。ちょっとずついい体に、マッチョになってきました」。すでに体重は、オフに入ってから4キロも増えたという。

 初のタイトルを獲得し「好打者=柳町」というイメージも定着した。最高出塁率の称号を得た男が、なぜ「2桁本塁打」という強打者への転換を志すのか。その背景には、タイトルホルダーゆえに実感していた“物足りなさ”があった。

「やっぱり結局は、長打を打てるバッターが相手バッテリーは怖いと思うので。そこは挑み続けたいところ、求め続けたいものだと思います。僕のことを怖いと思って勝負が避けられれば、もっと後ろに繋がって、もっと強力な打線になると思う」

「1億に恥じない活躍ができるような準備をしなきゃいけない」

 打者としての怖さ――。柳町が身につけたいと抱く正体だ。今季はリーグトップの出塁率を記録し、打率.292も首位打者を争った牧原大成内野手に次ぐリーグ2位。打点はチームで2番目となる50打点をマークし、本塁打もキャリア最多となる6本塁打を放った。

 その一方で62個の四球を選びながら、相手バッテリーに完全に勝負を避けられた敬遠は1回だけ。その時々の打順の巡りはあれど、思った以上に少ない。

「今年も出塁はしましたけど、(打者としての怖さがあれば)もっともっと出塁率も伸びると思いますし、フォアボールの数も増えるのかなと思います」。まだ自分には“打者としての怖さ”が足りない――。そう感じさせられる1年でもあった。

 長打、そして本塁打が増えれば、他の打撃成績も上向いていく。それこそ、近藤健介外野手のような長打も打てる打者として逞しくなることが、このオフのモチベーションになっている。 

“1億円プレーヤー”となり、責任感も増す。「まだ給料が入ってないので実感はないですけど、もっともっとやらなきゃいけないなって逆に思っています。1億だからこそ責任感もあると思いますし、それに恥じない活躍ができるような準備をしなきゃいけないな、とはすごく思います」。チームの中心を担う存在としての自覚も漂う。

 来季は小久保裕紀監督から一塁にも挑戦するように指令を受けている。メーカーには中村晃外野手と同じ型のファーストミットを発注。「しっかり内野ノックは受けて、本多コーチだったり、監督に判断は委ねようと思います」と、抜かりなく準備していくつもりだ。

 この日の前日はクリスマス。茨城県の実家で焼肉を楽しみ、英語にハマっているという息子に知育玩具を贈ったという“柳町パパ”。「それこそ(一緒に舞台挨拶に登壇した)与田(祐希)さんのユニホームの『HAWKS』っていう文字を見て『ABC!』って言ってました。アルファベットがもうわかるみたいで」。そう語る時の顔は、1人の優しい父親のそれだった。

 その肩にのしかかる責任は重くなった。“柔”から“剛”へ。2026年、逞しさの増した新たな柳町達の姿を見られる日が楽しみだ。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)