シャンパンファイトで見た山川穂高の“予期せぬ行動” 歓喜の傍らで…感じた決意

山川穂高【写真提供:産経新聞社】
山川穂高【写真提供:産経新聞社】

日本S史上6人目の3戦連続HRも…まさかの行動

 鷹フル特任記者、むなかったんのあらたです! 第5回となる記事のテーマは「シャンパンファイトの舞台裏」についてです。日本一に輝いたホークス。“歓喜の瞬間”に立ち会うことができました。開幕直後の苦しみを越え、誰もが満身創痍で戦い抜いた2025年。その思いを爆発させる選手たちの傍らで、目に映ったのは山川穂高内野手の「ある姿」でした。

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 日本シリーズでは連日の大接戦を制し、2025年のプロ野球の頂点にたどり着いたホークス。日本一をつかみ取ったナインの喜びと興奮が最高潮に達し、ついにシャンパンファイトを迎えた。その開始直前、目に飛び込んできたのは「MVP男」の驚きの行動であった。

 選手の生の声を聞くべく、インタビュアーとしてシャンパンファイトに参加した。1,000本を超えるシャンパンやスパークリングワインを手にしたナインの前で、選手会長の周東佑京内野手が声を張り上げた。「明日から休みだ。しこたま酔って、酔って、飲んで、飲んで騒いでいきましょう」。まさかのリーグ単独最下位に沈んだ苦しい時期を経て、登り切った険しい山の頂。チームメート同士で労をねぎらい、1年の頑張りを讃えあう最高の時間が訪れた。

 選手たちがスタートの合図を今か今かと待ちわびていたその時だった。日本シリーズで史上6人目となる3試合連続ホームランを放つなどの活躍でMVPを獲得し、日本一に大きく貢献した山川だけは予想だにしない行動をとっていた。

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続きの内容は

・不振を乗り越えた「感覚」とは
・歓喜の中で見せた「意外な行動」
・オフ返上!2026年への「決意」

最後の最後で掴んだ最高の感覚「やっぱり打てました」

 チームメートがみな笑顔を浮かべる中、山川はバッティングフォームの確認をしていた。あたかも投手がいるような間合いと雰囲気でドシっと構え、バットに見立てた右手をスイングさせる。鋭い目つきで、この“素振り”を何度も繰り返していたのだ。

 全選手が優勝の美酒に酔いしれようとしている最中に、山川はなぜそのような行動をとったのか。

「とにかく早く練習がしたい」

 シャンパンファイトも終盤に入ったころ、なぜ素振りをしていたのか直接尋ねてみた。「今の良いバッティングの感覚を失いたくないから。なので今、その感覚を確かめていた。とにかく早く練習がしたい」。多幸感に包まれた空気の中で、驚くべき言葉が飛び出したのだ。

 今シーズンは不調が続き、2軍落ちも経験した鷹の主砲。ただならぬ想いを抱えて臨んだ日本シリーズだった。10月26日にみずほPayPayドームで行われた第2戦。試合前のアーリーワークで起きた出来事だった。山川はここである感覚を掴んだ。

 それは「かかとの骨」への意識が重要だということ。

 これが何を指すのかは感覚の問題であるため、本人にしか分からない部分もあるが、構えた時に重心を置く位置ではないかと考えられる。打席で投手と対峙した時点で、いい打球が打てる準備をどれだけできているか。今シーズンは試行錯誤を繰り返し、何十通りものフォームを試してきた山川にとって、この感覚はこれ以上ない最高の手応えだった。「打てると思って打席に立っていたので、やっぱり打てました」。その言葉通りの大活躍を見せてくれた。

 シャンパンファイトで話していた通り、福岡に戻ってきた山川の始動は早かった。彼にとってオフという2文字は存在しないのかもしれない。今年味わった悔しさを、そして最後に掴んだ最高の感覚を忘れないように主砲はバットを振り始めた。2026年はどんなプレーを見せてくれるのか。開幕がすでに楽しみでならない。

(むなかったん・あらた)2025.11.05