“走塁ミス”直後に交わした言葉 柳田悠岐が明かす柳町達との会話と感謝…「もうごめん」

柳町達(左)と柳田悠岐【写真:竹村岳】
柳町達(左)と柳田悠岐【写真:竹村岳】

3安打猛打賞で勝利に貢献

 痛い走塁ミスだったと自覚しているからこそ、自ら切り出した。「走塁は(聞かなくて)いいんですか?」。26日に行われた阪神との日本シリーズ第2戦。試合後、報道陣に囲まれた柳田悠岐外野手はいくつかの質問に答えた後、取材が終わろうとするタイミングで自らの走塁ミスについて触れた。

 初回に1点を先制された直後だった。反撃の狼煙を上げるべく先頭の柳田が左前打で出塁すると、続く周東佑京内野手も右前打で続き、無死一、二塁の絶好機を作り出した。しかし、3番の柳町達外野手への初球、バントの構えからバットを引いてボールを見送った際に、二塁走者の柳田が飛び出してしまい、二、三塁間でタッチアウトに。試合の流れを相手に渡しかねないプレーとなった。

 だが、この1つのミスをチーム一丸で取り返した。栗原陵矢内野手の同点適時打と、山川穂高内野手の2点二塁打で逆転に成功。ベンチでは生還した柳町と柳田が言葉を交わす姿があった。どのようなやりとりがあったのか――。

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続きの内容は

柳田が明かす、柳町との会話
小久保監督が語る、ミスへの本音
チームを救った猛攻

 アクションを起こしたのは、実は柳町からだった。ストライクと判定された初球。バットを引いたことに申し訳なさを感じていた。やり取りを明かしたのは柳田だった。

「『すいません』って言われたんですけど、『いやいやいや、もうごめん』みたいな」

 後輩の謝罪を明るく返した柳田も、試合後にはしっかりと反省の弁を述べた。「ランナーとして、どんなにミスったバントでもセーフになりたいっていう気持ちで僕はいたので。ストライクゾーンなので『やるだろう』っていう決めつけで、ああなったので。そこは反省して、しっかりバットに当たってから(走る)っていうのを今後、気をつけてやりたいなと思います」。

 小久保裕紀監督も試合後、このプレーについて「あれはバントする方(柳町)のミスじゃないです。飛び出した方(柳田)が悪いので」とコメント。指揮官の目にも、柳田の“判断ミス”は明らかだった。

ミスを帳消しにした栗原のタイムリー

 しかし、ここでホークスは崩れない。「あの流れでクリ(栗原)が打ってくれたのが大きかった」。そう小久保監督が語ったように、2死一、二塁から栗原が同点適時打を放ち、すぐさま試合を振り出しに戻した。柳田も「もう本当にチームメートに助けられました」と、ミスを帳消しにしてくれた仲間への感謝を口にした。

 この日5打数5安打で、日本シリーズにおける1試合の安打記録を作った周東は、「柳田さんが1番打者らしいことをずっとしているので、負けないように。あまり柳田さんを走らせないようにとは気をつけています」と語り、笑顔でチーム最年長を称えた。

 勝敗を左右しかねないプレーだったことは柳田自身が一番理解していた。だからこそ、報道陣に問われなくても自ら反省を口にした。この日、柳田は猛打賞を記録し、得点にも絡んだ。誠実な振る舞いと、ミスをカバーしようと奮起した仲間の思いが重なり、結果的に10-1という勝利を生み出した。「勝ったのでよかったです。またしっかり明後日、入りたいなと思います」。そう語り、柳田は球場を後にした。

(飯田航平 / Kohei Iida)